110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

人格の精神分析学(R・フェアベーン著)

 本書は講談社学術文庫版を読む。

 フロイトにより始まる精神分析の手法を批判的に分析し、その機能・概念を拡大してより現実的な適用を目指すという著者の手法に関する論文集。
 エディプスコンプレックスの出現よりも、更に遡り、育児期の母親・乳房との関係が、その後の分裂症(現在は統合失調症)や躁鬱症の基盤となるとするもの。
 私自体は、精神科医ではないので、この理論が実際に治療にどう反映されるのかに関しては、無知なのだが、提唱している理屈については興味がある。
 そして、自分自身がこの分裂症の気質を持っていることに気づくのだ(いちいち書いてある事があてはまるのだ)。

 精神(病や神経症)の問題は、本書の臨床例から伺うと、経験の累積性に関連しているようだ、以前経験した重大な発症要因が抑圧されて、あるときに、突然表面化する。
 最初は、何気ない癖のだったようなものが、だんだんエスカレートするということになるのだろう。
 だから、人生が長く生きれば、それだけ精神を病む可能性も増大することになろう。
 (だから、人間には適宜な寿命があるという、オカルト的な考えが思い浮かんだ・・・もし、神話の世界の様に800年も生きられたら、大半は狂気の中にいるのではないだろうか)

 また、明らかに現在は分裂症的な生き方を求められる(家庭・職場・友人関係・・・・等、それぞれ違う対応・役割がある)という側面もある。

 人間は、それ程堅牢なマシン(機械)ではないように思う、その上で、社会の秩序が保たれているのならば、それは1つの奇跡であるか、、社会的な抑圧が作用しているのだろう。