110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

逝きし世の面影(渡辺京二著)

 本書は葦書房から1998年に刊行されたもの、その後平凡社ライブラリー版として再発行された。
 本書は古書で入手したが、随分と版を重ねているので、読まれた方も多いことだろう。
 (ちなみに、葦書房版を、1度BookOffで見かけたことがある、既に持っていたので買わずにすましたが、あちらの方がサイズが大きいので、図版が見やすかったかなと少し後悔してる)
 
 本書では、江戸末期から明治初期に掛けて奇跡的に出現した、日本の「ある時代」を論じている。
 この時代は、当時日本を訪問した多くの外国人たちの、手記・旅行記などで絶賛されているというのだ。
 そして、その時代は、明治維新以後の西洋化の中で消えてしまったものとされる。
 文化は、流動的であり、本書で示した明治維新後に、それ以前の時代・文化を否定したように、第二次大戦後も、それ以前の文化を否定したのだ。
 だから、歴史的・時間的に同じ国に居ながら、しかも、遺伝子的にはつながりがありながらも、文化的にはかなりの部分が否定・抑圧されたのが現代の日本であることは間違いなさそうだ。
 ただし、文化を、否定したから良かったかもしれないところは、経済成長したことなど上げられよう。
 
 さて、既に、本書の題名のように「逝きし世」は現出しないのから、私としては、その光景をただただ夢にでも見ることにしよう。
 それにしても、本書に収録されたイラストにある様な街道筋を、歩いてみたいと思う。
 それはそれは、とてもとても美しいはずだ。