110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

儀礼のオントロギー(今村仁司・今村真介著)

 本書は講談社2007年刊行のもの。

 儀礼というものが、現在も存続し、それが非合理的であろうと、その社会を維持する一つの機関として働いているというもの。
 本書で論述されていない観点から述べれば、産業構造を考えるに、生活や生存に直接関係のある(と思う)第一次産業農林水産業)、そして、多少の生活の快適性を生むと考えられる第二次産業(製造業)、そして、何か得体の知れない第三次産業(サービス業)などがあるが、このうち、第三次産業は、究極的に考えていくと、我慢すればいらないものが数多くあるはずだ、それなのに、そういう業種はなぜ存在するのだろうか?
 さらに考えると、その存在性がよくわからないとした第三次産業の一部は、何故、第一次産業より、例えば収入が上なのだろうか?
 それを、単純に、社会の虚妄性(虚仮)みたいに言ってしまえば、安易な紋切り型の解決なのだろうが、そうすることは、何か大事な「事」を見逃していることになるのではないか。
 それら虚仮の表面に張り付いているのが儀礼という形式なのではないかと思うのだ。
 (その儀礼の影には巧妙な権力装置が見え隠れするわけだ)

 しかし、その儀礼(虚仮)があるおかげで社会が保たれているという、これもまた今までの議論と逆の展開(どんでん返し)が、本書にはあるのだ。

 本書でのこのような論説は序論的な含みが強い、そして、現在となっては、その論説の展開については、こういう問題に興味のある(いくらかの)人たちにゆだねられる形となった。