110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

時間はどこで生まれるのか(橋本淳一郎著)

 本書は集英社新書(2006年初版)で読む。

 物理学者の書いた時間論であり、とても分かりやすく読みやすい。
 時間は、素粒子というミクロな世界では存在せず、原子がある程度の数集まったマクロな世界にのみ存在するものであるとする。
 また、時間について本書では、唯識(仏教思想のひとつ)を例として、今(現在)事として生成しているという考え方を示し、時間が恣意的なものだという考え方を示す。
 そして、時間意識を持つということは、エントロピーに逆らって存在しようとすること、ありのままでは崩壊するのを防ぐための(その)「意志」から発生するということを示すのだ。
 
 著者は、本書を哲学的でないと記しているが、実は、大変哲学的な本でもある。
 また、私は、物理学も哲学も専攻していない門外漢だが、こと本件のような問題については、両者とも非常に密接な関係にあるように思っている。

 ただ、本書について異端の解釈を示すならば、生命が時間を創り出すという考え方、そしてそれが、生命自体の崩壊を防ぐためだとするならば、例えば、もし生命間の衝突があるならば、闘争というものが不可避となる。
 それは食物連鎖ということであり、ひいては(狂的状態かもしれないが)戦争というものまで、不可避なものと言うことになりそうだ。
 この結論は著者の意図でないことは確実だが、生命、そして、人間の負わされているものでもあると思う。

 上記の悲観的なところは、まぁ読み飛ばしてくださいませ。