110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

武士道(新渡戸稲造著)

 本書は岩波文庫版で読む、私の入手したは2007年第91刷改版であり、ものすごいベストセラーであることが窺える。

 しかし、その内容は現代に投影しがたいものであり、この人気振りとの差異を怪しむものである。
 本書に興味を持ったのは、著者がキリスト者であったからで、著者が英文で書いた本書、すなわち武士道とキリスト者である著者との関係に興味を持ったからだ。
 そして、その元をたどると、幸福論(三谷隆正著)の巻末で、三谷氏を偲ぶ討論会形式の中に、新渡戸氏の名前があげられたからなのだ。
 そして、南原繁氏なども、キリスト教の信者であり、この日本の古典的文化とキリスト教という関係はなにやら興味ある題材でもあるように思うのだ(が、それを研究し尽くす素養は無いが・・・)
 そういう観点で読むと、武士道は、西洋の騎士道の如く消えるが、その根本は残るであろう、という流れと、出版当時の状況からして、今まで培われた文化(武士道など)が衰微するにつけ、新しい支柱としてのキリスト教の立場を提唱しているところの、2つの将来像が読み取れるのだ。
 さて、現在の(日本の)状況はいかがなものか、どうも本書でも名前の挙がったニーチェの思索の影響を無意識に引き受けて、あたかも骨なしクラゲのような状況ではないのか、もしかすると、クラゲの形もなしていない状況かもしれない(それはそれで良い場合もある、すなわち、国力が上がっているときはそうだ、しかし・・・)。
 
 まぁ、そんなことを考えてしまった。
 しかし、誰が本書を読んでいるのか・・・・?(私は酔狂なのだが、疑問だ)