110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

戦後日本政治史(田中浩著)

 本書は講談社学術文庫版。

 政治は、多分皆さんも興味がおありでしょう、私も、一度戦後の政治の流れを知りたかったので、とりあえず本書を読んでみた。
 
 本書は、戦前の自由主義運動についての叙説を序章として軽く触れながら、戦後から本書の発刊時点1996年ころまでの日本の政治史を概観するというもの。

 大つかみなイメージとしては、自民党の成立と、その後、保革自民党社会党)対立の構図が保守同士の2大政党へと転化する様子を辿っている(この時点では、自民と新進だが、現在は民主と自民か?)、そして、対立政党であった社会党の凋落(保守政党化)を示すのだ。
 そして、ひとつの画期としての細川連立政権を表すが、すぐさま、羽田、村山と逡巡した後、橋本自民党政権へと戻り、却って、自民党の勢力が磐石になったとする。
 
 しかし、この後、本当の意味で自民党が野党になってしまう事態を予想できたであろうか?
 それも、本書の最後に現れた民主党(鳩管をもじって九官鳥という言葉があった)にである。

 まぁ、そんなことは当然著者が予測できる範疇を超えているのだが、本書を読んで思うことは、ものすごく政治による政策決定が遅いこと、ひとつの案件で10年以上掛けている「重要課題」が多数見えている、例えば消費税しかり。
 当然、その案件が重要であれば、審議や反対勢力との議論にも時間がかかるであろう。しかし、その決定までの時間の遅さが、早期対応により回避できたかもしれない損失を過大にしてしまう傾向にあることは、バブル崩壊後、今日の財政赤字問題を筆頭に共通することなのではなかろうか(本書の最終章でもすでに財政赤字問題が浮上している、その対策の1つが消費税だったのだが・・・・)?
 
 ちなみに、本書は(学術書としてはめずらしく・・・失礼)話が脱線する傾向があるので、小説のように読んだのだ(ある意味長所)。