110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

欲望の現象学(ルネ・ジラール著)

 本書は法政大学出版局刊行のもの。

 この著者の作品には人間の本質についての考察があるように思う。
 本書では、セルバンテススタンダールドストエフスキープルースト等の作品を元に、(人間の)欲望とその本質的なものを探求するものである。

 と書いたの上で言い訳するが、本書を読み解くことはなかなか難解であったので、多分に私見が入ることになると思う。
 まず、問題なく納得できるそうなことは、本書で定義する、欲望というのは、私→欲望物という関係ではないということ、私、媒体、欲望物という3点セットで発生するということ、自分の給料が安いと思うのは、自分より高級な人がいるからに他ならない、ということでこの部分は問題なさそうだ。
 この部分は、まさに資本主義システムを的確に説明しているようだ、資本主義=欲望のシステムと言ってもあながちおかしくは無い。

 次に、現在は宗教的な観念が喪失した時代だと思うが(特に日本はそうかもしれないが)、この欲望の対象が形而上なもの(神とか)という場合はどうかという問題が提起されているようだ。
 すなわち、求めても手にすることのできないものを欲望するという場合のその最後の結果はどうかということだ、ここが私としては難しい理解が難しいところだ。
 手に入れられないことは、そこには虚無感が湧き出るのでないか、そして、諦めの代償として、ほかのものを(代わりに)手に入れようとするのではないのか?
 さてそれは、本質的なことなのかという、暗にぼかした疑問が湧き出る。
 ここについては、残念ながら、著者の意図が一読では読み取れなかった。
 すなわち、先ほどあげた作者の小説では、登場人物はこの形而上的な本質に対しての欲望(志向)を見せるのだが、最後の結末では、形而上から(俗)世間に戻ってくると記されている、そして、この部分は肯定的に著者は描いている、問題はそこなのだが・・・・(再読の必要な本だわ、それも、「赤と黒」と「失われた時を求めて」と「ドンキホーテ」と「悪霊」などを読んでから(いずれも長編だ!!))