110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

言葉と悲劇(柄谷行人著)

 本書は1989年第三文明社より刊行されたもの、私は講談社学術文版(1993年初版)で読む。

 この著者の作品は久しぶりに読む、今まで読んだ本は、内容について曖昧な点を残しながら読んでいたが、本書は講演集という形なので全体的に内容がわかりやすく、氏の思想を理解するうえで適当な入門書となる。
 本書に収められた講演は、1984年から1988年までであり、現在からは20年以上前のものだが、今読んでもなかなか考えさせられる内容ではある。
 私的には、以前「探求機廖◆崔亀甅供廚鯑匹鵑如△い泙劼箸塚?鬚契擇譴覆ったところ、それも、一番基本となるところが、理解できたようにも思う。

 そして、著者の指摘する、わが国での、「モダン」に対する「ポストモダン」は、かつての日本的思想の上にあり、西洋思想のような弁証法的な位置づけでの「モダン」と「ポストモダン」ではないため、思想が空転し、無化しているところがあるという指摘は、なかなか鋭いところがあるように思う。

 このバブル前夜からバブルの時期、日本は西洋諸国を含めて、もはや参考になる国は無いとまで奢っていたのであった。
 そこで、何が原因として発生したのかは、定かではないが、バブル後には、ご存知のとおりの低迷状態が続いたのだ、そして、天災とはいえ、今回の地震は、他国の成長に比べて長期の低迷を予兆しているともいえる。

 その原因のすべてが思想の変化によるものでは当然ないのだが、何か大きなブレーキが掛かったのは事実であり、古本を多読している身としては、1990年代の書籍に(経済)成長に批判的な著作が目に付くのだ。
 そこが分水嶺であったのだろうか?
 ・・・これは、単なる直感だが(ちなみに、この頃は、日本式雇用システムが崩れたり、製造業が外国進出するなどの産業空洞化が発生している)。