110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

倫理学ノート(清水幾太郎著)

 本書は講談社学術文庫版で読む。

 この本は異色である、倫理学について書こうとしたが、上手く纏まらないところがある、その纏まらない問題について逡巡しながら考察したことが書かれているのだ。
 あまり良いたとえではないが、(倫理学というものの)楽屋裏を示してくれる本ということもできそうだ。

 倫理学というもの、それはどのように存在しているのか?
 倫理学という学問自体に、何か問題点は無いのか?
 そのようなことに疑問を持った人には、本書は、何かヒントを与えてくれるかもしれない。

 私は、本書を、哲学書のひとつとして読んだ。
 そして、いわゆる科学的といわれることの限界を少しつかむことができた。
 丁度、パスカルのパンセの断章を少しづつ読みすすめているので、本書のもつ問題意識は良く理解できたと思うのだ。
 
 それは、あまりにも科学的なこと、また、人間の能力を過信することへの警鐘である(デカルトの否定)。
 
 今回の大地震とそれに伴う原発事故、そこでは「想定外」という言葉が頻発されたが、その「想定」というものについてはさらに深く追求する必要があったと思う。
 そもそも、「想定」ということば自体が、何かぼんやりしているではないか?
 そして、その言葉の定義付けは、政治的、経済的、権力的・・・・な「想定」なのではないのか?

 知らぬ間に倫理の話になってしまった。

 ちなみに、本書は、様々なことを考えさせられるとても良い本である。