110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

夜間飛行(サン・テグジュペリ著)

 本書は、新潮文庫版で読む。

 著者の生きていた時代というのは、現在とは大分異なるように思えるのだ。
 本作の、国際郵便の配送に、夜間飛行も含めるということ、そして、その危険性について考えると、本編に登場する、支配人リヴィエールや操縦士ファビアンなどは、自分で何らかの責任を背負って生きている様に見える、それと対応するように監督ロビノーは、サラリーマンであり、他律的に生きている様に思う。
 ここには、行動主義という思想が見え隠れするし、それに対応するべく、厳然とした現実感が描かれているように思う。
 だから、リヴィエールは本編での事故について、敢然と立ち向かっていくのだし、台風の中で、ほんの一瞬だけ、絶望的な星空を見た後行方を絶った、ファビアンの事故の顛末については、何も語られないうちに本編は終わるのだ。
 この事件の全貌を見てみたいという願いもあるのだが、この一編に関しては、そういうところに主眼が置かれているのではないのだと、私的には、納得できるところであった。

 本作は、古典と呼ぶべき作品と言えるだろう。
 久しぶりに、先をどんどん読み続けたくなった本に出合えた。
 傑作であると思う、(私は)。

 本新潮文庫版は、カバーに宮崎駿の画を使っているので、ジブリ系がお好きな方はカバーだけでも見てみてはいかが?