110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

冨の未来(アルビン・トフラー/ハイジ・トフラー著)

 本書は講談社2006年刊行のもの。

 なんというか、サービス業というものがよく分からないなぁ・・・ということで、いろいろ考えていたのだが、そういうことにある解答を与えてくれたのが本書。
 農業や工業のようないわゆる実体経済の時代はとうの昔に過ぎ去って現在は知識の時代である。
 しかも、金銭を指標にしている経済も、その半面を見ているだけで、非金銭による経済も存在していることに気づかなければ、全体像は浮かび上がらないのだ、という。
 そして、21世紀はそういう第三の波の時代であり、それはアメリカという国で実現しているのだ。

 うーん、本書では、ポストモダンは否定しているのだが、全体のトーンは、ヘーゲルの楽観主義と、人間中心主義を基にする自然科学信奉ではないのかと思うのだ。

 そして、本書では、日本について良い面と悪い面を指摘しているのだが、もし、この著作が5年遅れたら、日本についての言及度はかなり減ることだろう。

 しかし、一つの疑問は深まった。
 本書の様な実体のない知識による生産性の向上という題目は、現状として認めざるを得ないのだが、ひとたび、その未来性に疑問が起ると、そのツケを実体経済レベルで解決せざるを得なくなる。
 言葉を変えれば、バーチャルな夢見心地でいるうちは良いのだが、ある日突然、その夢に気づくととんでもないことになる、という過去におけるリーマンショックのような事例や、現在の、ある国家の抱える財政問題のような火種を根本解決できるのかということを思った。

 そう、とりあえずは、そんな難しいことを考えずに、問題を先送りにし続ければ大丈夫だよ。
 そう、太陽活動が活発化して地球を丸呑みにするまで夢を見続ければよいのだから・・・?

 本書の著者が一番嫌いだと思う「シュティルナー(=悲観論者)」は、私だ。

 そうそう、本書は上下巻に分かれているが、一冊105円、しめて210円の知識だ。