110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

断章83~85

 断章83は「欺瞞的諸勢力の章をここから始めること」という、少し気になる文で始まる。
 その背景は「人間は、恩恵なしには消しがたい、生来の誤謬に満ちた存在でしかない。何ものも彼に真理を示さない。すべてが彼を欺く」ということだという。
 それは、断章82で救いの一つと思ってしまった理性にもおよぶ、それは「真理の二つの原理である理性と感覚とは、それぞれが誠実性を欠く上に、相互に欺きあっている」という、一方の「感覚は偽の外観を持って理性を欺」き、理性は「感覚が理性に持ってくるこのまやかし」を「今度は感覚が理性から受け取るのである」すなわち「理性が仕返しするのだ」。
 そして「霊魂の情感が感覚を乱し、偽りの印象を与える。彼らは競って嘘をつき、だまし合っている」・・・確かに、感覚による偽りは否定できない、当然間違った入力は間違った答えを出すものだ。
 その後は「しかし、偶発的で、そしてこれらの異質的な能力のあいだの不和から生じるこれらの誤謬のほかに・・・」で、まさに断章となる。
 「ほかに・・・」のその後がとても気になる。

 断章84
 「想像は、途方もない見積りをして、小さな対象をわれわれの魂を満たすほどまでに拡大をし、向こうみずな思い上がりから、大きなものを自分の寸法にまで縮小するのである。ちょうど神について話すときのように。」(全文)
 確かに、私について言えば、自分の実力以上によく見せようとしてしまうことは、有る。

 断章85
 「自分の財産の貧弱なことを隠すといったような、われわれの心を最もつよく捉えているこの種のことがらは、多くの場合、ほとんどとるにたらないことである。それは、われわれの想像力が、山のように大きくした、全くの無である。想像力がもうひとまわりすれば、われわれにそのことを苦もなく発見させてくれる。」(全文)
 どうしても隣の芝生と比べてしまう、いや、ひどいときには、神さえも比較対象にしてしまう。
 でも、その想像力の輪が一回りして冷静に考えてみると、随分落ち込んでしまうものだ。
 私のは恥ずかしい人生だなぁ。