110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

現代政治学入門(バーナード・クリック著)

 本書は、講談社学術文庫版で読む、原作は「What is Politics?(1987)」で、本文のみを訳してある。

 本書は、英国流政治学の入門書として位置づけられている。
 そして、政治を考える上で非常に参考になる、例えば、マキアヴェリ君主論)に言及し、「緊急事態において権力を集中する必要があるのとはまったく逆に、長期にわたって国家を保持するためには、共和主義的な方法で権力を分割するのが最良であるとも教えている」などということを取り上げている。はんn
 すなわち、緊急に解決しなければならない課題には権力の集中が必要だが、政治を安定させるのは、共和制(合議制)が良いと言うのだ
 なるほど、そんな事を踏まえて考えてみると、わが国は、緊急な課題は多いが、国会などではなかなか法案が通らないという事態が見受けられる。
 しかし、マキアヴェリの指摘のような緊急対応はできない仕組みなので、勢い官僚主義的な方向へ行かざるを得ないとも考えられる。
 そして、55年体制はその逆のことが行われていた可能性をも示唆している。

 そんなことで、この読みやすい本を一読することは、すでに政治にどっぷりつかりこんでいる人以外には、ためになりそうな本だ。

 最後に、ハンナ・アレントの定義から、暴力は政治権力の破綻であるとし、そのことにより、クラウゼヴィック(戦争論)での、戦争とは「別の手段をもちいた政治の継続」という定義を覆したところなどは、とても素敵な記述であると思った。