110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

蘭学事始(杉田玄白著)

 本書は岩波文庫版で読む。

 この版は本文よりも注釈と解説の方が長いのだ、ただし、その苦労した分は、蘭学事始や解体新書(ターヘルアナトミア)という題名に関しての面白い話題を知る事になったので、全く無駄という訳ではない。

 本書を読むと、いままでになかったことをやること、例えば、(今なら)新しく起業すること、しかも、これまでになかった事業を行うということの、その苦労(創業?)が伺えるのだ。
 そして、杉田氏は、実にうまい具合に数名の知力を結集し「解体新書」という本に結実させるのだ。
 出版物自体が少ない当時、しかも海外文献の翻訳ということは、場合によっては自身の存在にも関わることなわけで、そういう状況でうまく立ち回る事ができたということが、この著者の能力なのではないかと思うのだ。
 たぶん、医学であるとか、翻訳については、それぞれ、他に優れた逸材がいたことだろう、しかし、ひとつのプロジェクトとして、この偉業を成し遂げるということについては、彼の存在が欠かせなかったのではないかと思うのだ(ステーブ・ジョブスという名前が思い浮かぶな)。

 そこが、杉田玄白の真面目(しんめんもく)だと思う。