110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

哲学概論(務䑓理作著)

 本作は岩波書店昭和33年刊行の物。

 西田幾多郎氏の哲学概論の裏に本作の書名があったので入手した、また、講談社学術文庫に「哲学十話」という作品もある。

 この哲学概論では四つの問題を取り扱うとする、それは「世界(客体)、主体、認識、実践」である。
 そして、それを貫くものとして「歴史と人間」に注目するという、それは、「私にとって最も具体的な存在とは、歴史とその弁証法的発展、及び歴史によって規定されながらしかも歴史を動かしていく人間の主体性だけであるからである」という。人間の歴史は、自然の産物として自然の発展物であるとしながら、他面、人間の主体的行動により歴史を創り出すという、歴史の二重性も著者の関心のひとつということだ。
 そういう、人間のもつ二重性を追求し、そこに「全体的人間」というものを想定するという時、そういう、普遍的に見える概念をどのように導いていくのか、そこに著者の労苦がにじみ出てくるのではないだろうか。
 ぎりぎりの論理をつくして、なおかつ軽率に形而上学にならないように、さらに、主観・客観、絶対・相対といった、一見して矛盾を持った概念をどのように融合させるのか?そこが、哲学者の腕の見せ所なのだろう、そして読者は、それを踏まえ、そのテクストについて、自分の認識の範囲で考えてみる事が必要なのであろう。
 書いている内容に疑問を持ったとすれば、それを、自分ならどう記すのかを考えてみることが、すなわち、哲学をすることなのでないのだろうか?・・・などと思ってしまった。

 以下、目次を転記する。

 はしがき

 序論

 第一章 哲学の概念
 一 哲学という言葉
 二 哲学と人間的存在
  ?鵯 人間現実の社会的・歴史的条件
  ?鵺 人間現実の個体的・実存的条件
 三 哲学と科学
 四 哲学の根本問題
  ?鵯 哲学は世界観の真理を求める
  ?鵺 哲学は主体的存在の真理を求める
  ?鶚 哲学は認識の真理を求める
  ?鶤 哲学は実践と価値の真理を求める

 第二章 世界の問題
 一 世界の意味
 二 世界内存在の三形態

 第三章 唯物論の問題
 一 唯物論とは何か
 二 自然主義唯物論
 三 弁証法唯物論

 第四章 観念論の問題
 一 主観的観念論
 ?鵯 経験的観念論
 ?鵺 先験的観念論
 二 客観的観念論

 第五章 唯物論と観念論の問題の総括
 一 唯物論か観念論か
 二 人間現実の二つの条件
 三 唯物論と観念論の対立は片づくか
 四 唯物論と観念論の長所と短所
 五 唯物論と観念論の再編成

 第六章 主体的存在の問題
 一 主体的という言葉
 二 主体的の分析

 第七章 認識の問題
 一 認識の成立条件
 二 反映理論
 三 真理の相対性と絶対性

 第八章 実践と価値の問題
 一 理論と実践
 二 全体状況
 三 歴史と倫理
 四 倫理的目的・倫理的価値