110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

良寛(水上勉著)

 本書は中公文庫(昭和61年版)で読む。

 自分の行く末が気になると、こういう人を題材にした本を読みたくなるのだろうか?
 本書は良書であると思う、良寛という人をどう捉えるのか、著者の考えに乗るもよし、本書にある豊富な資料から自分で考えるのでも良い。
 死ぬ間際、貞心尼の「生き死にの界(さかひ)はなれて住む身にも避(さ)らぬ別れのあるぞかなしき」に対して「うらをみせおもてをみせて散るもみじ」と返答した、良寛の心やいかに?

 青年、中年、壮年期には、「うらおもて」は見えてこないように思うのだ、しかし、老年期から死に至るまでに、その人の「うらおもて」が、浮き彫りになるように思うのだ。
 それは、自身のもつ「美醜」それぞれを含む自我の形が、そのままに表出してしまうからではなかろうか(くさいもののふたが壊れるのだろうか)?
 それは、誠に悲しくも、人間の業を見せつけられることになるし、行く末は、私自身もそうなるものだということである。

 その時に、良寛のように、さらりと浮世を離れることはできるのだろうか?
 現状としては、あまりにも俗な自分がいるだけだが。