110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

悪の哲学(中島隆博著)

 本書は、筑摩選書2012年刊行のもの。

 知人に「私は性悪説韓非子かな)の立場を取る」と言う人がいて、それが、どこか気になっていたのだろう、本書の題名を見て思わずつかんでいた。

 副題に「中国哲学の想像力」とあるように、中国の思想(哲学)を中心に、善悪についての考察を行う、そして、本書の底流には、昨年のフクシマでの地震原発事故という事例が横たわっている。

 本書を読んでいると、西洋哲学に言葉を置き換えても違和感のない問題が浮かび上がってくる、例えば、観念論に対する唯物論、主体に対する他者、ヒューマニズムに対する自然、そして、善悪の問題。

 善悪はどう判断すればよいのか?・・・絶対的な指標を求めるのならば、宗教としての神を定義したり、形而上学的なアプローチが必要になりそうだが、中国思想には神はいないのだ。
 そうすると、どうなるのか?
 簡単に逃げるならば「天」とい言葉で良いのかもしれない。
 しかし、「天」とは何かと更に追求すると、そこには此岸に値する彼岸という形而上的な意味が見えてくるので理屈が怪しくなるのだが、そこいら辺の裁き具合は本書をお読みいただこう、比較的易しい本だ。

 ちなみに、本書を読んでいると、用語が違えども、中国哲学(思想)は、十分に西洋哲学と併置して検討できるのものではないのかと思った。

 さて、本書の主題は「悪」だが、あなたは、この世の中を「性善説」「性悪説」いずれと考えるだろうか?