110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

<子供>のための哲学(永井均著)

 本書は講談社現代新書(1996年初版)のものを読む。

 私より年上だが比較的若い哲学者である本著者を、はずかしいことながら見くびっていた、それは、著作の題名があまり哲学らしくないように思ったからだ(「翔太と猫のインサイトの夏休み(ナカニシヤ出版)」とか)、そのために、これまでは、一冊も氏の本は読んでいなかった。
 ところが、100円棚にあったので「まぁ、安いからいいか」と思って読んでみると、これは良い作品だなと思った。

 本書の題名にある「子供」とは、子供の感覚(感性)を維持できる人であり、本書の中では、思想(?いや哲学か?)の水の中に沈んでしまう人のことであろう。
 そして、本書での課題も明確に2点だけであり。
 「なぜぼくは存在するのか」
 「なぜ悪いことをしてはいけないのか」
 である。

 もし、この2点について明確な考え方を持っている人には、本書は不要であろう、しかし、つきつめていくと、それが明確にならないことがわかるのだから、そういう人が、読めば、なにか不思議な状況に陥るはずだ。

 もっとも、この世の中が、上手く切り分けられるならば、これほど悩ましいはずはないわけで、既に、プラトンが「善のイデア」などという賛否両論の定義をすること、そのこと(問題提起)について、結論が出ていないと行けないのに、未だ、解決には至っていないのだ。
 いや、解決できないことがわかったのだ。

 そういう状況下でも哲学がしたいという方には、本書は最適な入門書になるだろう。
 ただし、(哲学の海に)沈んで浮き上がれないことになっても、当方は責任をとることはできないので、あくまで「自己責任」ということで御願いしたい。