110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

現代英米哲学入門(岩崎武雄著)

 本書は講談社学術文庫昭和51年刊行のもの、だから「現代」と書名にあるも少し前の感覚である。
 
 本書の中心は英米哲学の定義にあり、それは「つよい理論的性格」と「つよい反形而上学的特徴」にあるとする、すなわち、自然科学的な手法のもとで哲学的考察をすることにある。
 そして、その実践的な摘要課題として、倫理・道徳の問題をとりあげ、どのような方法でこれを実現するかという観点から平易に解説するという小冊である。
 取り上げられている哲学はさすがに古いのだが、その問題意識は現在も未だ解決されていない、いや、解決することを諦めたものかもしれない。

 (知ったかぶりをすれば)プラトンがなぜイデア論を採用したのか?
 それは、究極的な善を判定するときに人間の視点にいるかぎり回答を出せないという、ある種の相対論に陥りつづけているからなのだろう。
 だから、そこに人間の鏡としての神を置いたりして解決をはかろうとしたが、トドの詰まりはどれもこれも失敗した。
 現代は、理屈は進歩したが、未だに問題の区分が細かくなっているだけで、かえってややこしくなっただけのようだ。

 だから、未だに、正義だとか善だとかを求めている。
 原子力発電は是か非かの問題は理屈だけでは決められないのだ。
 それなら、実践あるのみということになるが、もし、間違った選択をすればどうなるか?
 そして、その間違っているかもしれない選択をし続けたのが人間の歴史だと思う。
 当然ながら、その選択した人は、その当時は、正しいと思った(と自分に思い込ませていた)ことは間違いない。

 そのような平衡の上に、私たちは時間をつぶしていくことになる。
 
 それが、人間の姿なのだろうか?!