110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

復興期の精神(花田清輝著)

 本書は講談社学術文庫版で読む。

 マルクスの影響なのだろうか、その弁証法的な手法で書かれた作品は一見復興期=ルネッサンスあたりを起点にして西洋の思想を批判している。
 しかし、本書の各章を書かれたのが戦時中ということを考えるとまさに火中での戦時批判、いや戦争終結後を視野に入れたエッセーを書いていたことになる。
 自分はそこまで読みきることはできなかった、初版跋(あとがき)を読んで始めて気づいたわけだ。
 そこで、この本の重みに気づくということになる。

 今読んでいる「即興詩人」のアンデルセンを本書では孤独でエゴイストでストリンドベリと両極をなすぐらい強力な奴だと論破されているのを読んで、そうかなと批判しつつその論評にはなにやら避けて通れないところがあるように思えた。
 その部分は「・・・・堪えがたいほど孤独でもなければ、誰が真夜中にひそひそとささやきあう、木や花や椅子やコップの話に耳を傾けることができよう」というところで確かにそれは孤独の産物であると思ったのだが、そのとき「ディズニーのアニメはそういう題材が多くないかな?」とひらめいた、しかも世界的に支持されている。
 それはどういうことを表しているのかな?

 孤独な散歩人はふとそんなことを考えた。