110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

abさんご(黒田夏子著)

 本書は文藝春秋社刊行のもの、流行りにのった形だが、一見ひらがなが多く易しそうな文体はそうが問屋が卸さない、難度の高い一品、どちらかというと50年前の作品のほうが私にはわかりやすい。
 でも、この本を沢山の人が読むことだけでも多少(文学界)の救いではある。

 時代に取り残されること、自分が老いていくこと、周りのものが離れていくこと、そういう寂寥感を感じた、しかし、作者はそれについて悲観しているのではなく、その事をありのままに受け止めようとしているように思う。
 そういう芯の強さを、私はこの先に訪れる老年期に持ちえるのだろうか、その圧力の前にあえなく潰れてしまうのではないかと思う。