110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

チャールズ・ラム傳(福原麟太郎著)

 本書は昭和38年垂水書房刊行のものを読む。

 本書はある古書店の店外の棚にあった、そこは100円本なども並ぶ棚で、手にしてみると面白そうな内容に見える、値段はよく見えなかったのだが、300円も払えば私のものだと思い「これいくら?」と聞くと・・・店主もあちこち見開きおもむろに、「1800円です」!!引くに引けない意地で本書は私の手元に有る。
 良く見ると、奥付に限定500部の表示や謹呈の自筆署名など怪しむべきところはあったのに・・・まぁ、数少ない宝物として手元に置いておこう。

 本書を読めばチャールズ・ラムという人の生き方に好感を持つのだ、母親を精神病の発作で殺してしまった姉と生活を共にする、若いときの貧乏な時も、中年以降の比較的裕福な時も、そして、晩年自身の精神的・肉体的な老いを感じながら自身の生活が荒廃していく時も、やはり姉を思いやながら過ごす。
 彼は姉の死を見とることなく、とある事故が原因で死亡するのだが、それでも彼の蓄えからの利子と年金で姉はその生涯を全うすることができたと書かれているの見てほっとするのだ。
 彼の名声はその随筆によるところだというのだ、そして、その中での傑作が「古磁器」という表題のものでこれはこの師弟の貧乏な時代の生活から綴られたものである。
 そして、そこには貧富という側面ではとうてい著しきれない幸福感が漂っているのだ。

 人間の禍福とは簡単に言い尽くせないものなのだろうなぁ。