110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

断章114、115

 断章114は「多様性というものは」とはじまる、そして「声の調子」「歩きぶり」「咳のしかた」「はなのかみかた」「くしゃみのしかた」と例示していく。それに続けて「人は、果物のなかから葡萄を見分ける。そしてあらゆる葡萄のなかからマスカットを、ついでコンドリューを、ついでデザルグを、そして更にこの接ぎ木を見分ける。それで全部だろうか。この接ぎ木に、かつて同じ二つの房ができたことがあろうか。そして同じ房に同じ二つの粒ができたことがあろうか。等々。」最初は、多様性から様々な属性を挙げ連ねていたものが、いつしか普遍的なものと個別的なものの対比になっている。
 その後「私は、同じものを、全く同じように判断することはできない。私は、自分の著作を、それを作りながら判断することはできない。私は、画家がやるように、そこから少し離れなければならない。しかし離れすぎてもいけない。では、いったいどのくらいだろう。当ててごらん」と結んでいる。
 厳密に考えると、それぞれのものは皆異なっている。わたしとあなたは同じ人間だと言うが、姿や顔など厳密に見れば同じところは無いと言えよう。ではそれが同じ人間だと判断するにはどうすれば良いのか?これがこの断章にある「少し離れ」るということで、遠くから見れば私とあなたはなんと似ていることだろう。多分、犬や猫とは明らかに区別がつくだろう。では、どの程度離れれば良いのか・・・が本断章の課題であるのだが、あまり離れすぎると意味の差別化ができなくなることにも気づくのだ。

 断章115は、114を別の面から俯瞰した感じがする「多様性。神学は、一つの学問である。しかし同時に、いったい幾つの学問であろう。人間は一つの実体である。しかしもしそれを解剖すれば、いったいどうなるのであろう。頭、心臓、胃、血管、おのおのの血管、血管のおのおのの部分、血液、血液のおのおのの液体。都市や田舎は、遠くからは一つの都市、一つの田舎である。しかし、近づくにつれて、それは家、木、瓦、葉、草、蟻、蟻の足、と無限にすすむ。これらすべてのものが、田舎に包括されているのである。(全文)」