110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

空想より科学へ(エンゲルス著)

 本書は岩波文庫版で読む。

 いまさら社会主義はないだろうと思われるかもしれないが、いまさら読んでみてどこに問題があったのかを考えるのもひとつの趣向であろう。
 時間の経過とともに社会のシステムが良かれ悪しかれ変わる、それも紆余曲折を経てより良いシステムへ移行するという仮説が正しければ、資本主義が弁証法的な展開のもとより良いシステムに移行するという考え方もありえるのだろう。
 本書で触れているある産業が拡大するとともに寡占・独占化していき、それがとどのつまり国営化されることが望ましいという論調は、19世紀から20世紀の日本には良く適合していたと思う。
 戦前、戦後を通して、官が主導でインフラなどを整備して経済的に成功を収めたことは事実として受け取ろう、しかし、国営化していた、JR、JT、NTT、郵政などが20世紀後半に民営化された事実を考えると、国営化が最終ゴールではなく、その先に弁証法的な展開があったと考えてもよさそうだ。
 そして、資本主義という看板を抱えながら、福祉国家というサブタイトルで多くの財源を福祉関連に投資し、また、それが財政赤字の一つの要因であるとするならば、資本主義とか社会主義とかいう名前にこだわるよりも、その実態に目を向けることのほうが重要なのかもしれない。

 本書はそんな風に読んだので過去の思想というイメージは受けなかった。