110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

遊びの論(安田武著)

 本書は昭和46年永田書房刊行のもの。

 本書はを今読めば懐古趣味の書ということで結論つけられるだろう。
 古き良き演芸廓職人の賛美と終戦後の社会批判という感覚は否めない。
 そして、ちょうどこの時期は「豊かにはなったけれども古くからあったものことを捨て去っているのではないか」という批判が良くなされた時期でもあった。
 だから、男尊女卑、赤線肯定みたいな本書は不要と思われる人もいるかとは思う。

 しかし、思わぬ拾いものもした、本書の中で桃山晴衣いう人がとりあげられており、調べてみると2008年に亡くなっているが、それまで第一線で活躍していたのだ。
 以下のホームページでは彼女の音楽に接することもできるので一聴の価値はある。
 http://homepage3.nifty.com/ryukogakusha/

 さらに、本書の様な本はあくまで現代にいるつもりで読むと嫌悪感を持つかもしれないが、昭和46年、そして学生時代に戦争を体験した人の目でみるとどうかだろうかという感じで見ると、また違った感慨を受ける(かもしれない)。
 1日に1cmしか進まない組紐を作る職人、彼は、糸の染色が気に入らないと平気で1年待つという、もし、翌年も気に入らなければ更に1年待つという、こういう今となっては神がかった伝説に触れるのも一興だ。
 そして、私として極めつけだったのことは、「伝統」という言葉が(桑原武夫によると)明治以降にできた言葉であるということだ。
 伝統工芸、伝統芸能という言葉を見て、直感的に数百年の昔に意識が赴くのであれば、そこには大きな孔(あな=誤解や間違い)があいているかもしれないという警句に触れられたことであろうか?
 耳障りのよい言葉が果たして正確かどうか、そういう目を持つ必要性も多少はあろう。