110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

定本犯罪紳士録(小沢信男著)

 本書は1980年筑摩書房刊行のもの、私は加筆訂正されたちくま文庫版(1990年第1刷)で読む。

 現代の犯罪は不可思議だ、動機も何もわからんではないかなどと思いつつ本書を読んでいた。
 でもしばらく読んでいて、その事件の起きた時もやはり不可解だったのではないかと思ったのだ。
 事件直後では、その事件の説明、犯人の逮捕、不十分な情報の中での憶測、そして逮捕されれば安心感からだろうか、ほどなく報道が途切れて忘却される。
 そして不可解な事件だったというイメージと犯人の名前だけがかろうじて記憶の隅に残ることになる。
 事件の認識が明確になるには、状況に関する詳細な取調べ、事件の社会的な影響、そして裁判の進捗など、それだけ長い時間が掛かる要素があるからだ。

 犯罪は私たちの身近にへばりついている(解説の池内紀が指摘している)。
 今まで出会ったのは、たまたま凶悪なものでなかっただけの話で、そういうモノにめぐり逢ってしまう可能性(確率)は、誰でも、いつでも持ち合わせていることに、配慮しなければならないのではないだろうか?