110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

それでも、日本人は「戦争」を選んだ(加藤陽子著)

 本書は平成21年朝日出版社刊行のもの、私は、平成28年新潮社文庫版で読む。
 古本で買ったのだが、今確認したら(なんとまぁ)新しい本だったわけでいささか時代性を感じたりした。
 
 私、記憶力には自信はなく、適度な中年ですから、まったく本書で対象になった(エリート)中高生には歯が立たないわけで、身の丈にあった読み方をさせてもらった。
 とても読みやすい本なので時間がある方は一読されると良い。
 本書を読んだ感想としては、第一次世界大戦後から日本は変な雲行きになるなということ。
 それまでの、日清、日露までは戦勝した関係からだろうか、良きも悪しきも論点は明確に見えるし、引用された政治家などの言葉も先見性がほの見えたりする。
 しかし、その輝きが、第一次世界大戦あたりから消える。
 なぜ、こんな発言や行動をするのか、理由を説明されても、理解できない部分が出てくる。
 そこには本書の紙数では全然不足している、更に掘り下げねばならない裏舞台があるのだろう。

 さて、話は突拍子もない方へ飛ぶのだが、私は、事件があるとカフカのこの言葉を思い出すのだ。
 「人間のあらゆる過ちは、全て焦りから来ている。」
 この後に次の様に続くことを調べていて分かった「周到さをそうそうに放棄し、もっともらしい事柄をもっともらしく仕立ててみせる、性急な焦り」

 特に、第二次世界大戦の開戦前の部分は、まさにこの言葉が象徴するような事態であった。
 焦り、とは、時間を区切られた上で何らかの解決策を提示しなければいけない状況でありながら、その解決策を提示するための絶対的な「時間」が無いと思い込むこと、さらに悪いことに、本来「出来ない」ことは「出来ない」と言えば良いのだが、その言葉を封じられてしまったこと。