110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

ゲーテの警告・ニーチェの警鐘(適菜収著)

 本書は講談社+α新書板、取り上げようかどうしようか迷ったけれども、ここはマイナーサイトなので影響は無いと思うので取り上げた。

 この2書を読んでいるとどうもほとんどの人は「B層」もしくはそこに近くなってしまう。
 それでは、この日本を救うためには誰が立ち上れば良いのかという疑問を持っていたところ「そういう意味では学閥のある日本の官僚支配は優れた制度なのです(ニーチェの警鐘)」という一文に行き着いた。
 いわゆる、エリートにまかせなさい、馬鹿は政治に口出ししないように、ということになる。

 さて、B層の人間(少なくも非エリート)としてはどう突っ込むかだが、まず、この発想は、例えば、中国の科挙のイメージがわくし、著者の嫌いなプラトンの「国家」にも似たような思想が見受けられる。
 あとは、ローマのカエサルだね、議会制を皇帝制にするところなんか発想が似てるような気がする。

 また、ニーチェの読み込みが間違っていると、かなり日本の知識人を罵倒しているが、その辺は、20世紀に多少流行った「脱構築」あたりでテキストの読み方の多様性は論じ尽くされている様に思う。
 だから、間違っているとは簡単に判断できない。
 むしろ、私(著者)のニーチェの読み方に対して間違っているというのが筋のような気がする。

 あと、埴谷雄高は小説家でり古い哲学仲間ではないというところも、何か「哲学者」に資格があるような書き方で気になるところだ。
 著者が「哲学者」という肩書きを名乗っている以上、その自負から考えて彼は異なるということなのだろう、ただし、哲学することとは、ニーチェを詳しく知っていることも大切なことだが、そこに止まらず自分で考察を深くすることが大事なのではなかろうか、すなわち、ニーチェを超えていくことが大切な様に思う。
 まぁ、B層のたわごとということでご愛嬌!

 で、本書(2冊ですが)は「怒れる文章」とはどういうものかが知りたい人にはお勧めだ。