110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

織田時代史(田中義成著)

 本書の原本は大正十三年明治書院版、私は、昭和55年初版の講談社学術文庫版で読む。

 もとより、歴史は嫌いだった、暗記科目といわれ暗記の苦手な私はこの手の本は流し読みしていた。
 その伝統は本書にも受け継がれたのか、文庫版260ページほどの本に随分と時間を掛けて読んだ。
 (読むが遅いのだ、速読できる人がうらやましい)

 しかし、今回は、その遅々として進まない読書を楽しめた。
 一つは、この文庫版が原文を、新漢字、新かなづかいに改めるなど、今風に読みやすく配慮されていること。
 そして、講義ノートから起こされたという本書の内容が何故だか面白かったのだ。
 それは、私見ながら、この著者が信長びいきで記述する内容がとても気に入ったからだと思う。

 解説にもあるが、大正の時から現代まで歴史(学)が進歩していることは事実で、本書の記述にも修正点があること指摘されている。
 でも、その本が楽しいかったというのも一つの読み方のように思うのだ。
 信長は、それは誇張であろうが、魔王のような存在に例えられることがあるのだが、本書を読んでいると、確かにあまりにも時代を超えている考え方ではあるが、反面とても深慮して対応しているように見受けられる。
 その背景としては、信長は皇室を一つの形而上的な柱として動いていたからだと考えることもできよう。
 キリスト者のような「神に対する自分」という図式が、「天皇に対する信長」という位置に比べられ、そこに、客観的で無私な彼の行動の背景が見えてくるように思うのだ。
 (まぁ、本能寺がなければ、その才能からしてどうころんだかはわからないけどね)

 ただし、信長は、手下に相当に厳しかったのは、まずかったようだね。
 でも、その厳しさをきちんと受け止められた(うまくかわした?)人たちがその後残ったということなんだろうね。