110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

団塊の世代(堺屋太一著)

 本書は文春文庫版1980年刊行のもの、私は1989年第12刷版で読む。

 団塊の世代を一つの象徴とする、高齢化の社会保証問題が気になっていたので、その原点である本著作を読んで見た。
 実際には1976年当時に未来の状況を予想する形で小説化したもので違和感をおぼえる部分もある。
 例えば、当時も存在しただろうコンピューターが、本書で想定した1990年や2000年にもっと身近なかたちで存在していないので、大量の紙媒体で情報を保存しているような表現などがある、そうそう、コピー機も基本的にない。
 また、ローマクラブの「成長の限界」の内容から推測して、20世紀末には資源が枯渇するというシナリオをもとに、高度成長期以降は長期停滞期に陥るという想定で各短編の話がすすむ。
 だから、年功序列、終身雇用制度が予想以上に早く(1980年代)訪れるという想定になっている。

 さて、本作品を読んで見ると、経済の停滞により起こりえることについては、現在の観点で見ても妥当だと思う。
 そして、目前にせまる高齢者問題については、本書に収められた「民族の秋」という短編で、総理府参事官という肩書きを持つ福西と彼の部下大友との最後の方の会話が印象的だ。
 ここでは時代性から「高度経済成長」という言葉が使われているがこれを「バブル」と置き換えて見ると、なんかあまりにはまってしまう。

 本書が発刊された時は、まだ遠い将来ということで軽く考えてしまったところもあろうが、今読んで見ると、一概にあなどれないシナリオであったことがわかるのだ。