110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

私の聖書物語(椎名麟三著)

 本書は中公文庫BIBLIO2003年刊行のもの、その元は1957年中央公論社刊行のもので、大本は婦人公論に1年間連載されたもの。
 本書を知ったのは、少し前に上げた「自伝の人間学保阪正康著)」に『聖書を「バカヤロウの本」と思った椎名麟三』とあったのが気になったのでAMAZON買いとなった。

 確かに聖書は「バカヤロウ」なところがある、話の辻褄が合わないのだ、だから、論理的でないという比較的簡単な理屈で投げてしまうことはある。
 まぁ、キリスト教ならぬ他の宗教もだが、私にとっては理屈に合わないから信じない、として敬遠していたのだ。

 それでも、以前良く歩いていた時には、観音霊場を歩いて回って見たりとか、失礼ながら(宗教=仏教かな)冷やかしていたところはあったのだ。
 そのときは「日本人だから」みたいな分けのわからない理屈をつけていたのだから、程度はしれたものだ。

 しかし、今はどうかというと、特にこれといって入信しているわけではないのだが、宗教も必要なのではないかと思っている。
 きっかけは、数年前に親の介護でほとんどパニック状態になった時だ。
 理性的な人は、相談すればよいなんてことをいう人もあるが、それよりも、何か宗教を信じてそれを柱にした方が(そういう逆協の時に)強いのではないのかと、とりあえずその嵐の去った後(今)しみじみ考えてみるとそんな感じがするのだ。

 まぁ、そんなわけで、私は最近は宗教に偏見はないのだ、そしてそういう立場で本書を読むと、(やはり)とても良いのだ。
 たしかに、理屈ではどうしようもない、しかし、私以上の苦境に喘いだ著者が、それも、聖書を考え考え読んだ挙句にキリスト(教ではないかもしれない)を信じる。
 そこにまさに救いがあるように思う(「救いがないという救いもある」なんて書くと「禅問答」はやめろなんて思う人もいるだろうけれども)。

 べつに信心がなくとも、逆境にあるなと思う人は読んでみて良い本かもしれないね。
 下手な相談(カウンセリング)よりは役に立ちそうだ。