110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

「難死」の思想(小田実著)

 本書は、岩波書店、同時代ライブラリー1991年刊行のものを読む。

 いまさらな感じもするのだが、〈民主〉と〈愛国〉(小熊英二著)で「べ平連」について読んだときに、鶴見俊輔小田実の本を読んで見たくなった。
 本書の題名はチェックしてあったのだが、肝心の「安い」アイテムにめぐり合えずきたのが、先日お目に掛かったので、早速読んでみる。
 戦争を経てきた人の考え方というのは、ある意味、独特なものがあり場合によっては受け入れにくい面もあるのだが、やはり真面目に書いているなと実感させてくれることが結構ある。
 本書もそういう意味では、なにか切羽詰ったところがある作品に見える。
 まぁ、本を読むのは、自分を読むことでもあるので、皆に読めと言えるかと言うと、そこまでは言えない。

 でも、ここで扱われている話は、現在のの日本にも共通するところがあるかもしれない。
 例えば、最後の「『殺すな』から」は1976年の著作だが、「殺すな」は今の北朝鮮問題にあてはめることができる。
 「殺すな」、思想的な洗脳を受けているにしろ、もし、経済制裁で多数の人間が死ぬことになるのならば、それは人道的なことかどうか?
 かつて資源を封鎖されて戦争に走った国はどこか?
 平和に慣らされて失われたことなのかもしれない。
 実は、そのことをこの著者も言っている。
 ただし、彼は行動をおこしたが、私は誰にも知られないように自己満足のために書いている。

 ちなみに、一般に終戦は1945年とされているが、本当の終戦はいつなのだろうか?
 先ほどの小熊氏の著作では、いくつかの区切りを上げているが、その一つに、冷戦終結後(ソ連の崩壊後)という考え方が上げてあったようだ。
 それまでは、冷戦という事象にて棚上げ(モラトリアム)されていたということ考えなのだろう。
 そうすると、未だ、戦後30年程度、私たちは狂気と命名しようが、従軍慰安婦問題が出てきてもさほど驚かないことになる。
 実際に、日本はあの戦争以後きちんと戦後処理をしていないし、させてもらえないことは調べるとわかるのだ。
 ただただ、時間だけが過ぎていく、当事者(国)はすっかりそういうことを過去のことにしているようだが、さて?