110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

武家の女性(山川菊栄著)

 幕末の水戸藩の下級武士の家庭を女性の視点でとらえた本。
 今から見ると、経済的には貧しかったが、反面とても和やかな日常が、幕末の動乱の時期にもあったことが伺える。

 「一体にわれわれが考えるほど当時の女たちが不幸だったとはいえません。そういう中にばかりいればその状態を自然として、ほかの状態を考えなかったのですし・・・
 汽車や飛行機、ラジオや新聞に慣れた今日、そういうもののなかった時代の人はどんなに不便だったろうと考えますが、そういうものを知らなかった時代の人は、格別不便とも思わず、その状態に満足していたと同様に、道徳上の問題も同じことで、道徳観念の違う今日の人から見て、甚だけしからん、甚だ不幸なことばかりだったように見えるその時代にも、その中に生れ、その中に死に、それ以外の状態を知らなかった人々にとっては、必ずしも不幸とは限らなかったのであります。」

 読んでいると、当時の人たちの「死」の捕らえ方が淡々としていると思った。
 それが、「死」が身近にあったという事なのかもしれないが「ただそれだけのこと」だったのかもしれないと思った。