110円の知性

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空き家が846万戸存在する日本と700万のイタリア。日本列島の5分の4の大きさのイタリア半島でなぜ同じ「空き家問題」が起きたのか

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眼の前の利益だけを追えばよいという時期かどうか、慎重な判断が要求される時に日本もなっているのだろうね。

空き家が846万戸存在する日本と700万のイタリア。日本列島の5分の4の大きさのイタリア半島でなぜ同じ「空き家問題」が起きたのか
4/24(月) 6:32配信 婦人公論.jp
イタリア発、集落の空き家をホテルとして再生し、一帯で宿泊経営を行う分散型宿泊施設の考え方を指す「アルベルゴ・ディフーゾ」。ノンフィクション作家の島村菜津さんは、空き家問題の救世主になるといわれるその哲学と実践を、取材を通じて掘り下げてきました。煤だらけの壁、テレビも冷蔵庫も電話もない、インスタ映えとは無縁の料理。これらがなぜ人を魅了するのか? 島村さんは「人が手をかけ続けることが大切」といいますが――。

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◆増える廃村と空き家
イタリア半島は、島国である日本のほぼ5分の4の大きさだ。
そこには現在、約700万戸(2011年 国立統計局調べ)の空き家が存在しているという。
さらに、中山間地に位置する5672の市町村に絞れば、空き家の数は、だいたい200万戸になるそうだ。
そして完全に人が住まなくなってしまった廃村は、同年のフィレンツェ大学の調査によれば、184村だという。
一方、日本の空き家は、2018年の総務省の調べによれば約846万戸で、空き家率は13.6%と過去最多を更新した。
そのうち中山間地がどれほどの割合を占めるのかは不明だが、国内では「消滅集落」と呼ばれている廃村は、2015年の調べで157村だった。
どうして、イタリアと日本には、空き家が増えているのか。

◆高齢化率が非常に高い
まず考えられるのは、二つの国は、ともに高齢化率が非常に高いことだ。
2018年、日本の高齢化率は世界一で65歳以上が全体の28.1%を占めており、第2位はイタリアで、23.3%だった。
出生率の低さも両国は世界のトップを競っている。
結婚しない若者や離婚も多く、共働き家庭の増加もあって、一人っ子世帯も多い。
2017年の合計特殊出生率は、日本の平均1.43人に対し、イタリアは平均1.32人だった。
人口の推移を見てみると、日本は2008年の1億2808万4000人をピークに以後は減少し始め、イタリアでも、2017年の6100万人をピークに減少傾向にある。
つまり、二つの国では、少子高齢化によって、明らかに人口減少が始まっていることが、空き家が増えている最大の原因と考えられる。

◆空前の建築ブーム
もう一つ、二つの国には共通項がある。
それは、ともに第二次世界大戦の敗戦国で、戦後の復興とともに、空前の建築ブームと生活様式の劇的な変化を経験したことだ。
もちろん、日本の伝統家屋は木造で、日本人の8割以上が新築に憧れている。
家屋の平均寿命が130年近く、7割が中古に住むイタリアとでは、古民家を守ることへの意識や修復の手間もかなり違う。
だが、はっきりしていることは、そんな少子高齢化と、生活様式の大きな変化を体験した二つの国で、今、突きつけられている大きな課題の一つが空き家問題だということだ。

◆人が手をかけ続けることが大切
ことに中山間地に点在する集落の空き家化が社会問題となっているのは、それが環境問題に直結しているからだ。
日本と同じように、イタリアは、丘陵地帯を含めれば中山間地が国土の約7割を占め、森や水に恵まれた国である。
しかし、一度、人の手が入った山を荒らさないためには、人が手をかけ続けることが大切である。
枝打ちをし、下草を刈り、広葉樹を増やし、森を育てていく。
荒れた山は里山に獣害をもたらし、保湿力を失って下流域の水被害を大きくする。
コンクリート護岸やダムは一種の対症療法に過ぎない。
気候変動にも悩まされている今こそ、山村で連綿と続いてきた人々の暮らしに目を向ける必要がある。
そう訴えるのは、イタリア山岳部共同体連合の代表、マルコ・ブッソーネである。
「(山の)集落は、何も都市の養子になりたいわけではないのです。ただ、都市と対等な協定を結びたいのです。都市の人々もまた、我々が彼らを必要としているように、私たちを必要としているのです。
私たちが、ここに暮らし続けることで、生態系バランスが保たれているからです。たとえば、水、森林、二酸化炭素の削減、地下水の安定です。本当に都市住民が、我々に手を貸してくれるというのならば、水道料金に4ユーロ上乗せしてくれればいいのです」

◆人が山村に暮らし続けること
そんなわけで日本でも、2024年から、森林環境税が国民1人につき年額1000円、徴収されることになったが、こうした対策は、都市化と乱開発のもとに山の荒廃を放置してきた両国の、いわば最終手段である。
人が山村に暮らし続けること。
林業や農業といった森に手をかけるなりわいが存続していく。
そのことが、水や酸素の供給を、森や川に依存している、都市住民の暮らしの存続にも不可欠なのである。
※本稿は、『世界中から人が押し寄せる小さな村~新時代の観光の哲学』(光文社)の一部を再編集したものです。