110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

G7の「凋落ぶり」ばかりが目立った広島サミット。GDPも人口も影響力も、すでに「少数派」なので…

news.yahoo.co.jp

G7は現在辛うじて主流派を演じられている、今後の動向によりとても辛いことにもなる。

日本は、アジアの一員として、アジアの意見を言ってくれるものと期待もされているのだが、これが崩れた時が、日本国民の一人としては怖いし、この記事の指摘のように、アメリカや西欧諸国が穏当な立ち位置に見えるのに対して、議長国という自負からか岸田総理は珍しく強い発言を繰り返したようだが、それは、次のG20で、今回のG7という答案が採点されて返ってくることにまるだろう。

G7の「凋落ぶり」ばかりが目立った広島サミット。GDPも人口も影響力も、すでに「少数派」なので…
5/29(月) 8:10配信 BUSINESS INSIDER JAPAN

「日本の歴史で最も重要なサミットになる」
岸田文雄首相がそう述べ、鳴り物入りで臨んだG7(主要7カ国)広島サミット(5月19~21日)が終わった。
結果として歴史に残るサミットになったとすれば、それは「核なき世界」を画期したからではない。G7が主要先進国の衰退によって世界秩序をリードする役割を終え、かつての「金持ちクラブ」から「黄昏(たそがれ)クラブ」になったのを際立たせたからだ。
「G7、気づいてみれば少数派」そんな現実を噛みしめる時が来た。

「グローバルサウス」への配慮
岸田氏の選挙地盤・広島で開かれたことから、サミットのテーマは(1)核廃絶(2)ウクライナ(3)台湾(4)経済安保、とされた。
サミット拡大会合には、韓国とオーストラリアのほか、新興・開発途上国のインド、インドネシアクック諸島コモロ、ブラジル、ベトナムの6カ国も招待した。
これら6カ国は、経済成長が著しく国際政治でも発言力を強める「グローバルサウス」に属し、ウクライナ問題や台湾問題では日米の主張に与(くみ)しない。
5月20日に発表された首脳声明を読むと、岸田氏が呪文のように唱えてきた「ウクライナは明日の東アジアかもしれない」や、民主・自由などの「普遍的価値」といった表現は影を潜めた。
代わって使われたのが、「力による一方的な現状変更は許さず、自由で開かれた国際秩序を守る」との表現で、ロシアと中国を間接的に非難しているのが特徴だ。
グローバルサウス諸国からの反感を招かぬよう、官邸と外務省が知恵を絞った結果だろう。

欺瞞に満ちた「核廃絶
初日の5月19日、岸田氏にとってサミットの最も重要なテーマである核廃絶、核軍縮に関する共同文書「広島ビジョン」が発表された。
ロシアの核威嚇(いかく)はもちろん、核兵器のいかなる使用も許されない
北朝鮮に核実験と弾道ミサイル発射の自制を要求する
(中国を念頭に)透明性を欠く核戦力の増強は、世界と地域の安定にとって懸念
「核の脅威」に関してはこの3本柱から成り、中国、ロシア、北朝鮮を敵視する内容だった。
「核なき世界」と岸田氏は繰り返すが、日本の安全保障政策は、バイデン米政権が進める「統合抑止」戦略の下で、日本の大軍拡とアメリカの「核の傘」をドッキングさせる内容だ。
さらに、日本政府は核兵器の廃絶を目指す「核兵器禁止条約」に反対し続け、ドイツのようなオブザーバー参加にすら否定的な姿勢を示してきた。
岸田氏は「理想をいかに現実に近づけるか」と弁解するが、今回の広島ビジョンはむしろ、核廃絶を目指すとの主張がいかに欺瞞(ぎまん)に満ちているかを浮き彫りにする形となった。

ゼレンスキー大統領が参加した意味
では、ウクライナ問題についてはどうだったのか。
5月20日にゼレンスキー大統領が広島に到着してから、広島サミットはさながらゼレンスキーに「支配された(dominated by Zelenskyy’s presence)」感があった(インディアン・エクスプレス、5月22日付)。
官邸や外務省にも「サミットがゼレンスキー氏一色になってしまう」と懸念する向きがあったようだが、まさにその通りになった。
大統領が自らG7サミットに乗り込んだ理由は、ロシアとの戦争継続のために軍事支援の強化を要求するとともに、インド、ブラジル、インドネシアなど政治解決を求める新興・開発途上国に、ウクライナの立場を理解させることにあった。
これに対し、バイデン政権は5月20日アメリカ製F16戦闘機のウクライナ供与容認を発表、ゼレンスキー氏の希望に応えてみせた。ウクライナ側としては、軍事面での目的は達成したと言えるだろう。
サミット首脳宣言も「ロシアの違法な侵略戦争に直面する中で、必要とされる限りウクライナを支援」と冒頭でうたい、戦争継続を確認した。

「グローバルサウス」の反応
一方、新興・開発途上国はどう反応したか。
グローバルサウスの代表を自認するインドのモディ首相は、ウクライナ支援を求めたゼレンスキー氏に対し、「紛争解決に向け可能なことは何でもする」と答えた。
同時に、ウクライナ紛争は人道問題と指摘した上で「対話と外交が唯一の解決策」と述べ、政治解決の必要を繰り返した。G7とは一線を画し、ロシア軍の即時撤退を求める内容は口にしなかった。
「ゼレンスキー氏を待っていたが、同氏が約束の時間に現れず、会談できなかった」(EFE通信、5月22日付)というブラジルのルラ大統領は記者会見で、「ウクライナとロシアの戦争の話をするためにG7に来たわけではない」と持論を展開した。
欧米主導の対ロ制裁を支持しているのは世界で40カ国に過ぎず、グローバルサウス諸国の大半は政治的解決を主張している。
上記のようなモディ首相とルラ大統領の反応を見る限り、ゼレンスキー氏が今回のサミット参加で目指した、新興・開発途上国ウクライナの立場を理解させるという目的は達成されなかった。

ウクライナ問題「政治解決」支持の声大きく
ルラ大統領は5月26日までにロシアのプーチン大統領と電話会談し、中国、インド、インドネシアとともに、ウクライナ和平に向けてロシア、ウクライナ双方と協議の準備ができていると伝えた。同大統領は中国の習近平国家主席とも電話会談したという。
また、ウクライナ危機の仲介外交を担当する中国政府の李輝ユーラシア事務特別代表は、ウクライナポーランド、フランス、ドイツ歴訪を経て5月26日にモスクワ入りし、ラブロフ外相と会談した。
さらに同じ26日、中国外交部直属のシンクタンク、中国国際問題研究院はロシアとウクライナをはじめ新興・開発途上10カ国余りの国際政治学者や識者を招き、「平和への道 ウクライナ危機の政治解決の展望」と題したオンライン会議を3時間以上にわたって開催した。
筆者も参加したが、サウジアラビア南アフリカインドネシアの識者がいずれも紛争の政治的解決を主張したのが印象的だった。同時に、中国の仲介への本気度を感じた。

G7のGDP世界シェアは4割台に低下
広島サミットに話を戻そう。
グローバルサウスには現在、世界人口の半数を上回る40億人が住み、100以上の国家が属する。
一方、G7は発足した1970年代半ばに世界の6割強を占めた国内総生産GDP、構成国の合計額)シェアが4割台まで低下した。人口シェアでは世界の10%を占めるに過ぎない。昨今の経済力・政治的影響力の低下と併せて考えれば、いまや世界の「少数派」と言っていいだろう。
グローバルサウスはまとまりのある集団ではないが、共通点は多い。
米中対立でバイデン政権が強調してきた「民主か専制か」「アメリカか中国か」といった二元論的な「新冷戦」論に、グローバルサウス諸国は与しない。
また、普遍的価値観としての民主、自由、法の支配を主張する日米のような理念先行の外交ではなく、国益に基づく実利外交を追求する点でも共通する。
米中対立を利用して、エネルギー、食料、気候変動問題などで米中双方から経済的支援を引き出すことを利益とみなすスタンスも共通している。
グローバルサウスを「民主主義陣営に引き込む」という米欧側の狙いとは逆のベクトルが働いているのだ。

アジアで「西側の身分」誇る日本
岸田首相はことあるごとに日本を「アジア唯一のG7メンバー」と、誇らしげに口にする。
中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報(4月18日付)は、G7外相会議閉幕に際して発表した社説で、その「口癖」を次のように突いた。
「(日本は)アジアでG7唯一のメンバーと主張し、アジアで自分の『西側の身分』を突出させることにアイデンティティを見出してきた」
G7メンバーであることがあたかも「名誉白人」であるかのような錯覚に陥っている、と指摘したのだ。
日本の1人当たりGDPは米ドル換算で韓国、台湾、香港、シンガポールを下回り、世界30位にまで下落した。インドのGDPは間もなく日本のGDPを抜く。
世界秩序はもうアメリカの一極支配には戻らない。中国、インド、ロシア、ブラジル、南アフリカBRICS)に代表される多極化秩序が、それにとって代わりつつある。
G7の凋落は、2008年のリーマンショックの際、新自由主義に基づく金融資本主義が破綻したことで鮮明になった。その後のG7の凋落ぶりと、多極化の進む新たな世界秩序の現実が、一層際立ったのが今回の広島サミットだった。