110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

四千万歩の男(井上ひさし著)

 本書は週刊現代に昭和52年(1977年)から昭和58年(1983年)まで連載されたもの、現在自分が歩数目標にしている「4000万歩」は本書にちなんでいる。
 
 2008年に入ってから、読書の更新がなかったのは本書のおかげ様で、昨年、第一巻を読んだ後、残りの四冊を一生懸命読んでいたからだ、そう、文庫本で五冊、総ページ数は3000ページを超えるもので、読み終わると一山(小山だが)無くなるのだ。

 本書は伊能忠敬の日本全国測量の旅を記すものだが、残念なことに、蝦夷東海岸と、品川~三浦半島伊豆半島~沼津までの行程で終了している、全体の1/7だそうだ。
 井上氏が、残りの部分を完成してくれるかどうかは、未だ未知数だが、可能性は低いかと思う。
 なぜなら、いわゆる測量という地味な仕事の合間に、よくもまぁ、これだけ事件を織り込めるのだろうと思って読んでいたが、本書も終わりに近づくと、事件が主になり、測量の方はどこかに行ってしまった感がある。
 それはそうだろう、本来、日本全国の測量の旅の中に、本書のように事件が多発したら、とてもやっていけないだろう、しかし、週刊誌に連載する以上、地味な測量日誌に従って、歴史的考察をしながら、著作をすれば、味もそっけもないものになってしまうのは必至であろう、そんなわけで、史実がどうこうというよりも、楽しい時間を(大量に)過ごすという目的で読むのには良い本なのでは無いかと思う。

 でも、もし全国踏破まで描いたら、中里介山の「大菩薩峠」をしのぐ大著になるかもしれない(?)。