110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

感覚の分析(エルンスト・マッハ著)

 マッハの著作を初めて読んだ、法政大学出版局刊行のもの。

 感覚を扱うことは、すなわち、人間の身体を扱うこと。
 そして、それは主客問題について考えることにもなり、心身論につながることにもなる。

 マッハ自身は、本書でも、自分の考え方は哲学ではないとしているが、それでも、随所に参考になる部分がある。
 例えば、観念論、唯物論の双方とも表現は異なるが、思想的には、絶対的な視点から思考を始める同一の考え方だとしているところ、あくまで、マッハは(相対的な)関連性の中で事象をとらえているように思う(「要素一元論」の立場)。
 そして、形而上学的な認識はしないこと。
 また、自然科学的な抽象化、一般化の限界、すなわち、実世界に、理想的な状況(理想空間)はありえないことの現実的な認識が見受けられる。

 そういうマッハの思想に惹かれつつも、逆に、反自然科学的な考えも捨てがたく、逡巡しているところもあることに気づいた。