110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

動物という文化(日高敏隆著)

 本書は講談社学術文庫版1988年刊行のもの、本書には、講談社1973年刊行「人類文化史第一巻『人類創世記』に収められた「動物のパターン」と玉川選書1974年刊行「動物の生きる条件」という2編が収められている。

 生物学の本はなかなか読む機会が無いが、本書はとても楽しく読むことができた(歩き読み)。
 表題を見て、動物に文化とはどういうことだろうかと、疑問を持つ方もいることでしょう。
 たぶん、人間以外に、文化を創る能力があるとは思えないことでしょう。

 しかし、そういう意識・知性のようなものを動物は(たぶん)持っていないにも関わらず、それぞれの動物の構造や周囲の環境、そして、進化の度合いなどから判断して、その動物の生きている状況(世界)が、あたかも意識を持ってその世界に存在しているように思えてしまう事象が、本書を読むと出てくるのだ。
 本書の中で、地球上では、人間が一番進化した生物と言われるが、それなら、何故、単細胞生物(アメーバ)も同じように存在し続けるのか?もし、進化しているのならば、そのような下等な(失礼)生物は淘汰され、絶滅するのではないのか?という趣旨の問いかけを見て、目から鱗が落ちるような気がした。

 本書では、様々な動物を、それぞれ「××の文化」と命名し、その生物の住む(棲む)世界と生活状況を解説していく(例えば「扁平な文化(扁形動物)」「糸の文化(円形動物)」など)。

 そこには、人間世界では考えられないような、奇妙な世界・文化が存在する。

 しかし、アメーバのように単純に見える生物も、それが、ものすごくコンパクトな体の中に、複雑な動作を秘めていることに気づくと、ただただ驚くしかないのだ。