110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

反骨(金子光晴著)

 本書はちくま文庫2006年版で、金子光晴のエッセイを集めた企画もの。

 前回は、インド人から見た日本の評価(批判)であったのだが、本書は日本人による日本および日本に関する評価・批評である。
 この著者は、好きな人にとっては応えられない魅力を持っているところがある反面、嫌いな人にとっては、そのエゴイズムが素直に(強力に)前面に出るところが嫌味になるというところもあるだろう。

 かくいう私は、この著者が好きなのだが、度々、余りに個人的な視点から、政治や文化と言ったどうしてもマクロ的な視点を要求される問題を批判するところに違和感(そういう違和感があっても、なお許せるのがこの著者の人徳ではあろうが)感じることがある。
 そう、人間の奥深くある「モノ」をそのまま引き出せるところが、うらやましいのだ。

 でも、金子光晴の本当の面白さは対談で、本書では吉行淳之介と軽妙なのか重厚なのか一見では判らないようなところのものを見せてくれる。
 それは、以前、田村隆一との対談でも見せてくれたものなのだ。

 しかし、日本人として、また、戦前の生まれとしてありながら、その戦前の日本に対してこれだけ否定的な論調の人も奇特なように思う。
 すなわち、自分の歴史を(全)否定できる人ということなのだから。