110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

江戸の音(田中優子著)

 「江戸の想像力(ちくま学芸文庫)」の補填としての位置づけと著者自ら記す本、河出書房新社1988年刊行のもの。

 江戸時代の音、音楽、そして、文学が交錯しつつ展開する音楽論なのか、エッセイなのか?
 そして、現在では忘れてしまいそうになる、日本の音楽についての指摘がある。
 そう、日本の音楽は環境に没入してしまう、対置させれば、西洋の音楽は、音楽が独立した世界を持ってせまってくるということ。
 三味線の音が遠くで鳴っている、どんな曲かわからないが、その場の空気になじんでしまう、いや、三味線が遠くで鳴っているのも含めて、自分の環境(世界)がある。
 そういう世界は確かにある、残念なことに、私の幼少の体験では、それは、どからともなく聞こえる、ピアノの音であったがその世界観はわかるつもりだ。
 だから、ヘッドフォーンで自分の好きな音楽に埋没するというような、残念なこと(私見ね)はあまりできないな。
 遠鳴りの三味線、ピアノ、たまに胡弓のこともあったが、それは、とても風情があるんだな。

 和楽器は、わざと弾きにくく作られているとか、三味線の「さわり」とはなにかとか、義太夫節は人間の聴覚の錯覚により1オクターブ低く聞こえるとか、そんなことに多少関心がもてたら、本書を探して読んでみるのも良いかもしれない。

 ちなみに、中国では(1988年当時の事だが)未だ、中国の楽器(胡弓など)を町中で普通の人が演奏しているという、しかし、日本ではどうなのか、三味線、琵琶、琴・・・一部の人以外、だれが弾いているのだろう?
 そう、和楽ってどこに行ったんだろうか?
 
 すでに、「失ったもの」なのかもしれない。