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110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

日立製英高速列車の亀裂は800車両 応力腐食割れが原因か 日本の製造業に打撃

気になる記事が載っていた、この記事は6/2だが、調べると、5月13日の日付の記事があり、迂闊にもチェックできなかった。

そして、この車両、運行開始初日に空調ユニットから水漏れ騒ぎを起こした「いわくつき」の車両だったらしい。

水漏れの事故自体は、たぶん、全体の要素からすれば小さなミスに過ぎないと思う人もいるだろう、しかし、そういう、些末なところにミスが出るようになると、全体品質が低下していく、それは、日立という製造責任者の目が届かないところが「ある」ということになるからだ。

日本という国自体も、幻想的なフレーズとして「ものづくり」という言葉があるのだが、実質的にはもはや製造業の国ではない。

もし、製造業の国だったら、現在のコロナ禍の渦中でも、飲食業や旅行業などの補償問題はもっと軽く扱われるだろうし、製造業を中心にすでに景気回復に向かっているはずだ。

日立製英高速列車の亀裂は800車両 応力腐食割れが原因か 日本の製造業に打撃
2021年06月02日(水)19時05分 木村正人
<「ドル箱」の高速列車の運休で運行会社は大幅な減収必至。「鉄道の日立」は信頼を損ねたが、問題はそれだけではない>
[ロンドン発]イギリスで5月8日「鉄道の日立」のフラッグシップ、高速列車800系に亀裂が見つかった問題で、車両本体下のボルスタに亀裂の入った車両は800車両にのぼることが地元の鉄道記者の証言で分かった。応力腐食割れが疑われているが、根本的な原因は依然として分かっておらず、修理にどれだけの期間がかかるのか見通しは全く立っていない。
日立レールの説明では今年4~5月、ボルスタの安定増幅装置ヨーダンパー・ブラケット接続部と車両本体を持ち上げる時に使用するリフティングポイントで亀裂が見つかった。リフティングポイントの亀裂は全編成の約50%、ヨーダンパー・ブラケット接続部の亀裂は約10%で見つかった。近郊輸送用車両385系の亀裂ははるかに少なかったという。
筆者が関係者から入手したヨーダンパー・ブラケット接続部の写真を見ると、亀裂の深さは15ミリに達していたり、長さは28.5センチに及んでいたりする。
不眠不休で車両を点検している日立の車両基地を取材した地元の鉄道記者フィリップ・ヘイ氏は筆者に「800車両で亀裂が見つかったと聞かされた。亀裂の大きさはさまざまだが、小さくても列車を走行させているうちにどんどん大きくなる」と語る。
亀裂は塗装や汚れに隠れて肉眼では見えにくいため、専用の検査装置を使って亀裂があるかないかを慎重に点検しなければならない。ヘイ氏が見た写真ではリフティングポイントに入った亀裂もかなり長かったという。ヨーダンパー・ブラケット接続部とリフティングポイントの亀裂はいずれも英鉄道安全標準化委員会に「国家インシデント」として報告されている。
亀裂の原因について日立レールは「われわれは応力腐食割れと考えている。まず材料、次に天候や空気、水などの環境、三番目に金属にかかるストレスが要因として関係しているとみている。疲労亀裂ではない」と説明する。営業運転開始からわずか約3年半でこれだけ多数の車両の同じ箇所(ボルスタ)に亀裂ができた原因とメカニズムはまだ解明されていない。
「ボルスタには車両の蛇行動を制御するヨーダンパーと、カーブを走行する際に生じる車両の傾きを抑えるアンチロールバーから異なる力がかかる。4月にヨーダンパー・ブラケット接続部から亀裂が見つかった時は疲労亀裂(部材内に発生する単位面積当たりの応力が小さくても繰り返し生じることによって亀裂が進展する現象)が疑われたが、普段は使用しないリフティングポイントからも亀裂が見つかったことが問題を複雑にしている」
筆者にこう解説するのは鉄道雑誌モダン・レールウェイズ産業技術編集者ロジャー・フォード氏だ。今年4月、英イングランド北部で列車運行会社ノーザンが運行するスペインの鉄道車両メーカーCAF製車両でもヨーダンパー・ブラケット接続部に亀裂が走り、ヨーダンパー・ブラケットが剥落した。調査の結果、86編成のうち22編成から亀裂が見つかった。
これに続いて日立製の800系でもヨーダンパー・ブラケット接続部に亀裂が見つかり、当初は疲労亀裂が疑われた。運行中にヨーダンパー・ブラケットが剥落すれば最悪の場合、列車が脱線する恐れもある。
フォード氏は「根本的な原因が分からない限り、修理は不可能だ」とみる。日本の鉄道関係者も同じ見方を示した。英メディアは全車両を修理するのに18カ月かかると報じたが、日立レールは「われわれは18カ月と言っていない。乗客の混乱を最小限に抑えるために、修理は通常のメンテナンスサイクルに合わせている」と述べるにとどめた。
ヘイ氏によると、問題のボルスタは車両本体下に溶接されており、簡単には取り外せないという。またフォード氏は「仮に溶接して修理するとなると、高圧電流が車両の電気・電子機器を損傷する恐れがあるため、すべて取り外さなければならない。複雑な工程で時間がかかる」と話す。
日立製作所山口県の笠戸事業所で製造した高速列車395系をイギリスに輸出し、2012年のロンドン五輪では会場アクセス用列車「オリンピックジャベリン(投げやり)」としても活躍した。日立レールは「395系はイギリスで最も信頼されている列車の一つ」と胸を張る。
その技術力を買われて都市間高速鉄道計画(IEP)を受注し、800系や385系を英ニュートン・エイクリフ工場などで生産。日立が主導する特別目的会社アジリティ・トレインズが列車を保有する形で各運行会社にリースするとともに、保守事業も一括して受注した。
日立レールは亀裂が見つかった車両の製造場所について「最初は日本で製造された。それからイタリアでも製造された。最終的にイギリスで完成された」と説明する。800系の車両に使われているアルミ合金のほとんどはデータ改ざん問題で揺れた神戸製鋼所から納入されている。
日立レールは亀裂の入ったボルスタが神戸製鋼所製かどうかについて回答を保留しているが、神戸製鋼所は筆者の問い合わせに「当社はアルミ押出材を日立のイギリス車両向けに納入している。日立の車両の問題が報道されていることは承知しているが、日立から当社への調査依頼などは現時点でない。調査要請などあれば真摯に対応する。品質事案の対象材については当時の納入先といずれも安全性を確認できている」と強調した。
日立レールによると、IEPでは日立側が列車運行会社にリースする列車に基づいて支払いを受け取る仕組み。列車が利用可能になった場合にのみ支払いが発生する。列車運行会社ではなく日立が亀裂問題のリスクを負うため、政府と納税者には負担は生じないという。
しかし「ドル箱」の高速列車が計画通り運行できなければ列車運行会社は大幅な減収となり、最終的に赤字になれば税金から補填されるのは避けられないのではないだろうか。
ロンドンとマンチェスター、リーズを最高時速360キロで結ぶ高速鉄道計画ハイスピード2(HS2)でも新幹線車両で実績を誇る日立もカナダのボンバルディアと組んで車両の大型受注を目指している。しかし今回の大量亀裂で「鉄道の日立」の信頼は大きく揺らぎ、HS2の受注だけでなく「モノづくり日本」の看板にも大きな亀裂が走ったのは言うまでもない。


<「ドル箱」の高速列車の運休で運行会社は大幅な減収必至。「鉄道の日立」は信頼を損ねたが、問題はそれだけではない>
[ロンドン発]イギリスで5月8日「鉄道の日立」のフラッグシップ、高速列車800系に亀裂が見つかった問題で、車両本体下のボルスタに亀裂の入った車両は800車両にのぼることが地元の鉄道記者の証言で分かった。応力腐食割れが疑われているが、根本的な原因は依然として分かっておらず、修理にどれだけの期間がかかるのか見通しは全く立っていない。
日立レールの説明では今年4~5月、ボルスタの安定増幅装置ヨーダンパー・ブラケット接続部と車両本体を持ち上げる時に使用するリフティングポイントで亀裂が見つかった。リフティングポイントの亀裂は全編成の約50%、ヨーダンパー・ブラケット接続部の亀裂は約10%で見つかった。近郊輸送用車両385系の亀裂ははるかに少なかったという。
筆者が関係者から入手したヨーダンパー・ブラケット接続部の写真を見ると、亀裂の深さは15ミリに達していたり、長さは28.5センチに及んでいたりする。
不眠不休で車両を点検している日立の車両基地を取材した地元の鉄道記者フィリップ・ヘイ氏は筆者に「800車両で亀裂が見つかったと聞かされた。亀裂の大きさはさまざまだが、小さくても列車を走行させているうちにどんどん大きくなる」と語る。
亀裂は塗装や汚れに隠れて肉眼では見えにくいため、専用の検査装置を使って亀裂があるかないかを慎重に点検しなければならない。ヘイ氏が見た写真ではリフティングポイントに入った亀裂もかなり長かったという。ヨーダンパー・ブラケット接続部とリフティングポイントの亀裂はいずれも英鉄道安全標準化委員会に「国家インシデント」として報告されている。
亀裂の原因について日立レールは「われわれは応力腐食割れと考えている。まず材料、次に天候や空気、水などの環境、三番目に金属にかかるストレスが要因として関係しているとみている。疲労亀裂ではない」と説明する。営業運転開始からわずか約3年半でこれだけ多数の車両の同じ箇所(ボルスタ)に亀裂ができた原因とメカニズムはまだ解明されていない。
「ボルスタには車両の蛇行動を制御するヨーダンパーと、カーブを走行する際に生じる車両の傾きを抑えるアンチロールバーから異なる力がかかる。4月にヨーダンパー・ブラケット接続部から亀裂が見つかった時は疲労亀裂(部材内に発生する単位面積当たりの応力が小さくても繰り返し生じることによって亀裂が進展する現象)が疑われたが、普段は使用しないリフティングポイントからも亀裂が見つかったことが問題を複雑にしている」
筆者にこう解説するのは鉄道雑誌モダン・レールウェイズ産業技術編集者ロジャー・フォード氏だ。今年4月、英イングランド北部で列車運行会社ノーザンが運行するスペインの鉄道車両メーカーCAF製車両でもヨーダンパー・ブラケット接続部に亀裂が走り、ヨーダンパー・ブラケットが剥落した。調査の結果、86編成のうち22編成から亀裂が見つかった。
これに続いて日立製の800系でもヨーダンパー・ブラケット接続部に亀裂が見つかり、当初は疲労亀裂が疑われた。運行中にヨーダンパー・ブラケットが剥落すれば最悪の場合、列車が脱線する恐れもある。
フォード氏は「根本的な原因が分からない限り、修理は不可能だ」とみる。日本の鉄道関係者も同じ見方を示した。英メディアは全車両を修理するのに18カ月かかると報じたが、日立レールは「われわれは18カ月と言っていない。乗客の混乱を最小限に抑えるために、修理は通常のメンテナンスサイクルに合わせている」と述べるにとどめた。
ヘイ氏によると、問題のボルスタは車両本体下に溶接されており、簡単には取り外せないという。またフォード氏は「仮に溶接して修理するとなると、高圧電流が車両の電気・電子機器を損傷する恐れがあるため、すべて取り外さなければならない。複雑な工程で時間がかかる」と話す。
日立製作所山口県の笠戸事業所で製造した高速列車395系をイギリスに輸出し、2012年のロンドン五輪では会場アクセス用列車「オリンピックジャベリン(投げやり)」としても活躍した。日立レールは「395系はイギリスで最も信頼されている列車の一つ」と胸を張る。
その技術力を買われて都市間高速鉄道計画(IEP)を受注し、800系や385系を英ニュートン・エイクリフ工場などで生産。日立が主導する特別目的会社アジリティ・トレインズが列車を保有する形で各運行会社にリースするとともに、保守事業も一括して受注した。
日立レールは亀裂が見つかった車両の製造場所について「最初は日本で製造された。それからイタリアでも製造された。最終的にイギリスで完成された」と説明する。800系の車両に使われているアルミ合金のほとんどはデータ改ざん問題で揺れた神戸製鋼所から納入されている。
日立レールは亀裂の入ったボルスタが神戸製鋼所製かどうかについて回答を保留しているが、神戸製鋼所は筆者の問い合わせに「当社はアルミ押出材を日立のイギリス車両向けに納入している。日立の車両の問題が報道されていることは承知しているが、日立から当社への調査依頼などは現時点でない。調査要請などあれば真摯に対応する。品質事案の対象材については当時の納入先といずれも安全性を確認できている」と強調した。
日立レールによると、IEPでは日立側が列車運行会社にリースする列車に基づいて支払いを受け取る仕組み。列車が利用可能になった場合にのみ支払いが発生する。列車運行会社ではなく日立が亀裂問題のリスクを負うため、政府と納税者には負担は生じないという。
しかし「ドル箱」の高速列車が計画通り運行できなければ列車運行会社は大幅な減収となり、最終的に赤字になれば税金から補填されるのは避けられないのではないだろうか。
ロンドンとマンチェスター、リーズを最高時速360キロで結ぶ高速鉄道計画ハイスピード2(HS2)でも新幹線車両で実績を誇る日立もカナダのボンバルディアと組んで車両の大型受注を目指している。しかし今回の大量亀裂で「鉄道の日立」の信頼は大きく揺らぎ、HS2の受注だけでなく「モノづくり日本」の看板にも大きな亀裂が走ったのは言うまでもない。