110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

スティーブ・ジョブス(ウォルター・アイザックソン著)

 本書は講談社刊行のもの、現在国内でもベストセラーである。
 普段は、古本ばかりなのに、本書は「きちんと」買って読んだ、何故買ったのかというと、書店でちらりと見たときの巻頭の写真がとても良かった(クールだ)からだ・・・ただそれだけなのだ(不思議なもんだね)。

 読んでみると分かるのだが、やはりベストセラーにふさわしい作品だと言えそうだ、気諒?蓮▲献腑屮垢亮磴ず△砲弔い峠颪れているが、これを読むと、小説でもここまでは描けないのではないかと思われる、波乱万丈、疾風怒濤の人生を伺うことができるので「これはビジネス書ではなく小説なのかな?」などと思うと、兇任蓮∪こεな企業に成長させたアップルのCEOとしてのジョブスの手腕が伺える「正にビジネス書」を伺わせてくれる。
 
 そして、つい先日5000億ドル企業になったアップルが、ジョブスという一人の人物によって運用されていたことに驚きを感じるのだ、しかも、彼は、芸術的にアップルを経営したのではないのかと思うのだ。
 こういう経営方法は、今までなかったのだろうか?
 
 ちなみに、私の個人的なイメージでは、かつての日本には、本田宗一郎本田技研や、井深大ソニーなど、こういう芸術性(哲学性かな)を持った経営をしていた人たちがいたようにも思うのだけれど・・・・

 まぁ、そんな細かいことは除いても、本書は一読の価値があると思う。

 ちなみに、日本の製造業がなどという話をすると、随分飛躍したことのように思えそうだが、本書のなかで、ジョブスが語る米国の製造業に関する懸念が、日本の製造業の将来にも関係があるように思えるのだ。
 それは、
 「ジョブスは熟練エンジニアを増やす方法見つけなければならないと重ねて訴えた。アップルは中国の工場で70万人の作業員を雇っており、それだけの人数をサポートするには3万人のエンジニアを現地に派遣しなければならない」・・・「でも、米国でそれだけのエンジニアを見つけることはできません」・・・「これは現場のエンジニアであり、博士号を持っている必要もなければ天才である必要もない。製造現場で必要とされる基本的なエンジニアリングスキルさえ身につけていればいい。トレーニングは工業専門学校やコミュニテーカレッジ、職業訓練校で可能だ。」
 という記述だ。

 日本国内では賃金が高いとか、既に生産拠点が海外にシフトしているとか、製造部門それ自体が利益を生む時代でないとかいう指摘はすぐにできるだろう。
 しかし、最終的にモノとして成り立たせるのは、製造部門(工場)であることを考えると。少し気になる記述なのだ。

 モノつくりの経験・ノウハウを持った人が会社や自国内に残っていれば、その全体的な製造品質は維持できるであろう、しかし、製造ノウハウを失った会社は、徐々にその独自性や優位性を失うと思うのだ、それは、繰り返しになってしまうが、製造業の評価は最終的に作り上げた「モノ」によると思うからだ。

 まぁ、そんなことを考えてしまったのだわ。

 【追記】ジョブスのスタンフォード大での「伝説」と呼ばれたスピーチがUPされています(日本語字幕あり)。
 http://www.cancerchannel.jp/posts/2011-10-06/7275.html