110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

戦後保守党史(冨森叡児著)

本書は1977年日本評論社より、1994年社会思想社の現代教養文庫版として刊行された、私は2006年初版の岩波現代文庫版を読む。

岩波現代文庫版では終章に1994年以降の概括があるので少し便利だ。

ただし、おおむね本書で取り上げられているのは、基本的に細川連立政権樹立までの自民党の流れを追いかけたものだ。

過去のことをほじくっても役に立たないという一見実用主義の方も人間が過去に引きずられて生きていることを否定はしないだろう。

このブログでは安倍さん嫌いという記述を何度もしたのだが、最近は、嫌いだが、安倍さんが何を目指しているのか私的な推測が出来てきた。

それこそが「過去の栄光」なのだと思う。

それが、高度経済成長期から「Japan as No1」と言われた20世紀の全盛期なのか、それとも戦前のある時期、例えば明治時代なのか、その辺はよくわからない。

もしかすると、短命で終わった時に著した「美しい国へ」の内容が意外に本音なのかもしれない(内容は全然覚えていないけれども)。

まぁ、その辺は良くわからない、けれどもある種の夢は持っているのだろう。

そして、本書を読んでいると、安倍さんは相当祖父である岸信介の影響を受けているのではないかと思う。

ただし、相当に強硬な路線も見せるが、反面、相当なところ大衆主義(ポピュリズム)の影響も受けているので、政策が分裂しないかという心配がある。

まぁ、あと数年でその後は院政を敷くのだろうが、自民党に人材がいなさそうなので、後継者は大変苦労するのではなかろうか?

さて、脱線が過ぎたが、本書について私が語れることは少ない、日本という国は政官業の組み合わせで成長してきたわけだが、戦後のある時期までは、政治に関係なく経済成長していたのだということがわかる。

党内政治力があっても、実質的に、政治手腕がない政治家でも、成り立ってしまったのだ。

そう、官(?)や業が上手くやっていたのだ。

それが、例のバブル崩壊を機に崩れて、あきらかに、政そして官の本当の意味での手腕が試される様になったのが、まぁ、今世紀だ。

前世紀は「世界の工場」と言われるぐらい製造業を核に伸長したのだが、そのお株は、現在、中国を筆頭とする東南アジアに持って行かれた。

そう、あの時期に戻る道はないのだ。

だから、安倍さんには頑張った貰いたいのだ、今の、日本は日本語を話す人々が集まっているだけの別世界なのだから、新しい方法を考えなければいけないと思う。

さて、話は全然違う方へ行くのだが、本書で、佐藤栄作という人の評に、沖縄返還という手柄以外はなにもないというような記述があった。

沖縄返還交渉は、たしかに今までの政治的交渉ごとの中でも最高に難易度の高いものだったことは事実で、それだけでも評価されるべきなのだが、ここに、「他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス(若泉敬著/文藝春秋)という本があって、この著者が沖縄返還の黒子となって活動したことが記されている。

現在もそうだが、外務省にそれだけの交渉事ができる人材がいるかというと、潜在的には分からないが、省内のセクショナリズムを考えると難しい様に思える、あの佐藤優さえ、省内の紛争から検察に上げられ、実質北方領土返還の可能性の芽を摘まれた経緯がある。

若泉氏の貢献を多分政府も官庁も認めたくはないだろう、でも、現在につながる日本の外交手腕を考えると、これほどプラスに触れた功績は見当たらないように思うし、普通の方法ではないことが特別な事情が作用したと考えても良い様に思うのだ。

まぁ、既に過去の物語ではある、自分の心のうちに収めよう。