110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

日本資本主義発達史(野呂栄太郎著)

本書は岩波文庫版昭和29年初版、私は昭和42年の15刷を読む。

 

本書を入手したのはいつのことだろう、多分BookOffで100円(+税)だったと思う、105円だったかもしれない。

白い帯がついていた記憶があるのだが、現状ではなくなっている。

名著だ。

ベッドの下から突如現れたのだが、この機を逃すと読めないと思って読み進めた。

本書をご存知の方もいらっしゃることだろう、本書はいわゆる社会主義マルクス主義)の考え方により著されている、「だから既に終わっている」という考えをする人は、表面的なところで判断する傾向があると思った方が良い。

ちなみに、本書の論考は全て戦前に書かれている「だから、古いので終わっている」という人も同様に浅慮の人と言えよう。

資本主義の一つのカギは、土地などの資産を持たない「労働者」が輩出されることが一つの要件だが、明治維新時に、それまで土地に緊縛されていた農民(年貢として搾取はされていたが)が、土地から解放(農地を売買できるようにした)し、さらには、(重い)税金と言う形で生計が成り立たなくさせることで、小作人や賃労働者へと転化させられたというもの、すなわち、資本家だけではなく国家も後押しする形で、封建社会から資本主義社会へと転換したという流れはとても素晴らしい考察だ。

さて、終身雇用制で正社員比率が多く、労働者が守られていた時代があったのだが、それが、新自由主義と言う名のもとに解体され、大企業中心に利益を供与できるよう便宜を図り、逆に、力の弱い、非正規労働者の搾取を強化する・・・これは現状の話だね。

これを比較すると、農民が非正規労働者に変わっただけで、なんか似ている・・・なんて思った人は、まぁ、ある程度のこじつけはあるけれども、何か、奥の方にある「何か」が共通している様にも思えてくるのではないかな。

今、マルクスの「資本論」を勉強しているなんていうと(佐藤優は本出しているけれども)奇異に思えるかもしれないけれども、そして、当時の本は多分に読みにくいところもあるけれども、本著者のような優秀な学者が書いているものは、やはり、読んで損はないところもあるよね。

そうそう、その「資本論」もきちんと買ってあるんだけれども、まだ読んでいない。

死ぬまでにはなんとか一読で良いのでしたいな。