110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

経済学入門(都留重人著)

 本書は1976年刊行のもの、現在も入手できるかは不明だが古本屋を探せばあるだろう。

 最近、経済学の本を読むことが増えた(それは経営学ではないのだ)。
 先般も、最近の経済学の本を読んで、少し失望したが、本書は、当初まったく期待していなかったのだが、それに反して、とても良い本であった(経済学というのは良い学問だなぁと思った)。
 何が、違ったのだろうか?
 それは、都留重人という著名な経済学者が、経済に関して素人の人に対して、非常に身近な話題から話を進めていること、理解を助けるための比喩が的確であることなどが上げられる。
 そして、何より、ご本人には失礼かもしれないが、「哲学」を感じられたこと。

 当初は、GNPの話から入ったので、良くある、マクロ理論、ミクロ理論に入るのかと思いきや、今度は、所得と経済成長の話になり(業績が良くても給料が上がらないのは何故・・・みたいなこと)そこから、所得の配分という形で話題が進む。
 そして、一番印象に残っているのは「蚊を輸入しての企業化計画」の章で、例えば、一国の所得が増えても、実質(生活)の質が変わらない(低下もあるかもしれない)の事例が解説される。
 これは、「所得介入」という本書では言われていることで、詳しくは本書を読んでいただければ分かる。

 さて、ここで考えなえればならないことは、もしかすると、1976年時点より、経済学(経済システム)は進歩したので、本書の内容は陳腐化しているのではないか・・・という批判。
 それから、その「所得介入」と言われるものが、現在、経済活動の中で大きな比率を占めているので、言っていることは理解できるが、排除できない・・・という評価。
 それぞれがあるように思う。
 そして、市場による均衡と、それを阻害する要因との関係が、複雑に作用して、現在の経済システムが存在するようにも思う。

 最後のページには、
 現代の社会における人間の復位こそが、私たちの課題である。そして、そのための第一歩は、「福祉は所得に比例する」という通念の体制的性格を見抜くこと、「所得」は「費用」の表現であるだけでなく、「仕事」でありうべき人間活動が「労働」となっている事態の反映でもあることを知ることであると、私は考えている。
 「実存主義」的だね、とか言われそうだが、(悪しき)懐疑主義陥っている「ポストモダン」よりは良いような気がする。
 (そういう歳だね)