110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

良い経済学 悪い経済学(ポール・クルーグマン著)

 本書は1997年日本経済新聞社から刊行されたもの、私は2000年刊行の日経ビジネス人文庫版で読む。

 一応経済学部を出ているので、詳しくはないが経済学の基本的な考え方ぐらいは知っているつもりだった。
 しかし、その自負は崩れ去った。
 それも20年も前に出ていた本書によってだ。

 本書では、当時のアメリカの状況を踏まえながら、経済成長率の鈍化が国際競争によってもたらされたとする理屈を批判している。
 すなわち、本書の少し前に(日本のバブル期を頂点として)、アメリカは日本との競争力に劣り追い詰められたとする理屈が取り沙汰されたことがある。
 私は、そのようなイメージを持ちつづけていた。
 企業競争と同じように国家間競争により経済成長率は決まるという短絡的な誤解だ。
 詳しい内容などというのはおこがましい、皆ご存知のことだろう。
 結論は、昭和世代の私が製造業を懐古していただけのことだということだった。

 製造業が中国やアジア諸国に移転し、産業構造が変わり第三次産業が主流になる。
 これは、単に日本の特殊事情でもなく、国際間での本書に指摘された」比較優位」の結論だったわけだ。
 アメリカの後を負うように、構造的に低成長構造に足を踏み込んだわが国は効果的な手を打てずに現在にいたったわけだ。
 そして、本書でも予言しているように賃金労働者間で格差が生まれることも、現在の状況を考えると妥当であるようにも思われる。

 本書を読むと、経済成長関しては、良いも悪いもその原因は国内の状況にあるようだ。
 為替の高低はグローバル企業の業績に関連して気になるのだが、そういう影響は確かにゼロではないのだが、それよりも、足元で何が起こっているかをきちんと把握することが重要だということのようだ。