110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

クルーグマン教授の経済入門(ポール・クルーグマン著)

 本書は1998年メディアワークス刊行されたもの、その後、日経ビジネス人文庫を経て、現在は、ちくま学芸文庫版で読める。

 少し前に同じ著者の「経済政策を売り歩く人々」を上げたが、それと比べて、本書の翻訳は、学芸文庫らしくない異例にくだけた翻訳であったので「何じゃこりゃ」と、あとがきを読んでみると翻訳者の山形浩生氏の翻訳に関するコメントが読めた、すなわち、本書は英文でもくだけた表現なのでそれを表したということらしい。
 当初、この翻訳に違和感を覚えたが、だんだん慣れてくるものだ、ただし、内容はそれによってやさしくなったわけではない。
 堅苦しい翻訳に嫌悪感をもっている人で、さらにクルーグマンを読みたいという人は本書から入るのが良いかもしれない。

 さて、内容は、本書の英題である「期待しない時代」に表されるように、1990年代のアメリカの経済やそれに関連する政治的状況を論評している(そして、まさに日本も「期待しない時代」に突入しているように思う)
 そして、おまけとして日本についてもコメントされて。いる(あくまで当時の)。
 ご存知のように、アメリカはその後ダイナミックに変化して、その後のリーマンショックを引き起こし、再建の途上にある。
 しかし、日本は本書の書かれた時も「異常」とされたが、経済成長が殆ど無い状況でさらに現在まで至っている。
 それは、本書にも記されているように、経済成長はどのような手段で実現されるのか・・・という事に関しては、経済学自体が回答できないことによる。
 すなわち、金融緩和が功を奏することもあれば、政府による公共事業が呼び水になり成長するかもしれない、しかし、それはあくまで「後だしじゃんけん」なわけだ。
 本書はそういう目で現在の政府を見つめる契機になった。

 ただし、間違ってはいけないことは、政府による悪い(経済)対応は簡単に一国を不景気に陥れるということだ、だから、政治上の経済対策というのがいかに難しいかがわかるのだ。

 細かく比較すれば相違点は多々あるが、あのアメリカも日本の現状と同じような状況に陥っていたのだ、だから、一つの参考として本書(「経済政策を売り歩く人々」もそうかな)を読む価値はあると思うのだが・・・。