110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

魔の山(トーマス・マン著)

本作は岩波文庫版で読む。

先日、宮崎駿監督の「風立ちぬ」をTVで見ていると、ちょうど今読んでいた本作が取り上げられていたので偶然とは言え少し驚いた。

岡田斗司夫の「風立ちぬ」解説では、ファウストゲーテ)や神曲(ダンテ)に言及していたのに対して、本作の主人公、ハンス・カストルプの名前がつけられた登場人物が登場するにも関わらず「魔の山」との関係に触れていないので、まぁ、日本人にとってはそういう作品なのかと思った(宮崎駿は完全に意識しているはず)。

ノーベル賞作家である、マンだが、代表作である本作はかなりな長編であり、日本で読む人は今となっては少ないのかもしれない。

かくいう私も、この本はBookOffで入手したのだが、値札を見ると105円(消費税5%の古き良き時代)であり、それほど前に買ったものを寝かせ続けたわけだ。

それが、ひょんなことから読み始めたのだが、実は、時代もなにも全く異なる設定ながら、この作品の世界観が、コロナ禍にある日本の姿に重なってしまい、最後まで読むことができたのだ。

これは、私の単なる思い込みだと思う、しかし、読むのに苦労はしたのだが、本作は今読むと、今の社会に、妙に符合して見えてしまう。

コロナ禍の時期にふさわしい過去の名作としては、カミユ、そして、デフォーの「ペスト」を思い浮かべたのだが、本作を読んで、こちらのほうがふさわしいと思った。

そう、現在の日本社会の閉塞感と似ていると思ったのだ。