110円の知性

110円(税込)の古本を読んで得た知性とはこんなもの(消費税変更に合わせて改題)。

韓国が日本を抜いていく――これがアベノミクス時代、最大の「事件」だ

韓国が日本を抜いていく――これがアベノミクス時代、最大の「事件」だ
10/3(日) 6:02配信 現代ビジネス
 日本の実質賃金が2000年頃からほとんど横ばいだったのに対して、韓国の実質賃金は2020年までに1.4倍になった。このため、2000年には日本の7割でしかなかった韓国の賃金が、2020年には日本より9%ほど高い水準になった。さまざまな国際ランキングでも、いまや韓国は日本より上位に位置している。
 こうなったのは、韓国で技術革新が行われたのに対して、日本は円安に安住して技術革新を怠ったからだ。

日本人が聞きたくないニュース
 総選挙が近づいていることもあり、アベノミクス評価の議論がなされている。
 アベノミクスの期間に起きた重要な「事件」の1つは、韓国が日本を追い抜いたことだ。いま韓国は、さまざまな指標で日本を抜きつつある。
 韓国の人口は日本の4割程度だから、GDPで見れば、日本のほうがずっと大きい。このため、変化はあまり目につかない。しかし、重要なのは、GDP全体よりは、豊かさなど、1人当たりの数字である。
 しかも、韓国は、香港やシンガポールのような人口が非常に少ない都市国家とは違う。都市国家の1人当たりGDPが高くなるのは、ある意味で当然だ。しかし、韓国は、基本的には日本と同じような構造の国家だ。それが豊かさの点で日本を追い抜いていくのは、重要な「事件」と言わざるをえない。
 ところが、このことは、日本ではほとんど報道されていない。日本人にとって聞きたくないニュースだからだろう。
 しかし、聞きたくないニュースや不都合なニュースに耳を塞いでしまってはいけない。そうしたニュ-スほど真剣に向き合う必要がある。

日本より豊かになる韓国
 日本と韓国の年間平均賃金の推移を、下図に示す(略)。

これは、国内物価変動の影響を取り除いた実質値を、2020年基準購買力平価によってドルに換算した値である(ドル表示)。したがって、為替レートの変動も取り除かれている。
 日本の値が2000年の3.8万ドルから2020年の3.9万ドルまでほとんど横ばいだったのに対して、韓国の値は、2000年の2.9万ドルから2020年の4.2万ドルまで、1.4倍になった。このため、2000年には日本の76.2%でしかなかった韓国の実質賃金が、2020年には日本より9%ほど高い水準になった。
 逆転は、2015年に起きている。これは、アベノミクスの最中のことだ。韓国の最低賃金が日本より高くなったことが、暫く前に話題になった。最低賃金は政策で決められるものなので、「韓国では高すぎる値に設定されているのが問題だ」との意見もあった。
 しかし、最近では平均賃金が日本より高くなっている。これは、経済の実力を表すものだ。日本の実質賃金が停滞しているのに対して、韓国の実質賃金の成長率は高いので、時間が経つほど、日本と韓国の乖離は拡大するだろう。
 なぜ韓国が日本より豊かになるのか? その理由は明らかだ。韓国は技術開発を行い、生産性を上げているからだ。それに対して日本は、技術が停滞している。
 これはとくに先端的な情報関連で明らかだ。日本には、スマートフォンを生産できるメーカーは存在しない。しかし、韓国には、サムスンLG電子という2大メーカーがある。サムスンは、世界最大のスマートフォンメーカーだ。
 また、韓国は、高速通信規格「5G」を世界に先駆けて商用化した。先端半導体を製造できるのは、世界でTSMC(台湾積体電路製造)とサムスン電子しかない。

大学、競争力……様々なランキングで韓国が上位に
 日本と韓国の関係が逆転しつつあることは、様々なランキングに現れている。2021年6月に公表されたジュネーブにある国際経営開発研究所が作成する「世界競争力年鑑2021」によると、2021年の順位は、韓国が23位で、日本は31位だ。2017年には韓国27位、日本25位だったのが、2019年に逆転された。「デジタル技術」では、韓国8位、日本が27位だ。
 国連が発表した電子政府ランキング(国連加盟193カ国が対象)によると、2020年において、日本は、14位だ。それに対して韓国は世界第2位だ。
 日本にはノーベル賞受賞者が28人いる(米国籍を含む)が、韓国人には、平和賞以外はいない。
 だからといって、韓国の研究開発能力や高等教育水準が日本より低いわけではない。なぜなら、ノーベル賞は過去の研究業績に対して与えられるものであり、日本にノーベル賞受賞者が多いのは、かつて日本が基礎研究で世界の先端グループに属していたことを示すものだからだ。
 現在、あるいは将来の研究開発能力がどうなるかは、大学の状況に現れている。
 では、日韓の大学を比較すると、どうなっているか? 
 世界大学ランキングの1つである「THEランキング」で、アジアの20位までをみると、つぎのとおりだ。
 中国7校、韓国4校,香港4校,シンガポール2校、台湾1校。これに対して、日本は2校(東大6位、京大10位)しかない。韓国は日本の2倍だ。なお、韓国の4校は、ソウル国立大学、KAIST、成均館大学校(SKKU)、浦項工科大学校(POSTECH)。

国際的に活躍する韓国人
 国際的に活躍する人材を見ても、同様の傾向が見られる。主要な国際機関のトップに日本人が就いていない。それに対して、韓国人の活躍が目立つ。
 第8代国連事務総長潘基文(パン・ギムン)氏は、2007年1月から2016年12月まで在職した。 
 韓国人ではないが、ジム・ヨン・キム氏は、子供の時にアメリカに移住した韓国系アメリカ人の医学者で、ダートマス大学学長や世界保健機構(WHO)の局長を務めた。そして第12代世界銀行グループ総裁を務めた。
 韓国の人材は、重要な国際機関トップの重責を担うだけの指導力、知見、人脈ネットワーク力などを持っていることが分かる。
 このようなトップクラスだけでない。韓国の若い世代は、海外に働く場を求めている。それに対して、日本人の内向き志向は、昔より強まっているように見える。

日本は円安に安住して、技術開発を怠った
 なぜこんなことになってしまったのか? それは、日本が真摯な技術開発の努力を怠ったからだ。
 アベノミクスの評価に関して普通言われるのは、目標としていた消費者物価の2%上昇ができなかったものの、株価が上昇したことがプラスだとされる。しかし、これは株式保有者の立場からの評価であって、国民の大部分である勤労者の立場からのものではない。
 株価の上昇は、上で述べたように、ドルで評価した日本人の賃金を抑えたことによって実現したのだ。技術開発や新しいビジネスモデルの創出で実現したことではない。
 それにもかかわらず、こうした評価は、政治を動かす力には全くなっていない。これが日本の悲劇だ。
野口 悠紀雄(一橋大学名誉教授)

野口氏の記事を久しぶりに拝見した、良い記事だと思う。

ただし、コロナ禍で痛感したが、野口氏が希望を抱く日本はもうすでに無いのではないかと、思うのだ。

技術開発は、いわゆる製造業でが典型だと思うのだが、この、日本の国民のある年齢層より下はその製造業を捨てたのではないかと思うところがある。

製造業を古い言葉だが3Kと言って揶揄した国民、その代わりに、一見スマートなサービス業に転化した国民、そこでは理工系の技術が生かされる職場自体が喪失されてしまったように思うのだ。

もちろん、世界的にもトップレベルの製造業は日本にもたくさん残っている、しかし、現実に、今、町中にあるのは「Made in China」ではないか、今世紀に入るくらいのときには、まだ、「Made in Japan」で暮らせたのだが、もう、そういう希望は一部の高所得者にしかなしえない、幻になった。

そのことすら国民が気づけなくなった時に、実は、すでに終わっているのではないかと思う。

コロナ禍の世論でもそうだ、とても、技術的とは言えない偏った「統計数字らしきもの」に翻弄される世論(国民)を見るにつけ絶望感に襲われた。

若い人(一部だと思うのだが)が否定する高齢者は、その技術で世界を揺るがしていた世代だった、それをいとも簡単に批判できるのは、もしかすると、その技術を評価できるだけの見識がないからではなかろうか、そう、すなわち無知であるがゆえの暴挙なのかもしれない。

さて、記事について私論を言えば、本記事は韓国に追い抜かれたという事実を述べているのだが、それよりも、韓国に追いつかれたということだけでも、本来日本人は謙虚で、あるべきだったろう、軍事政権下の韓国は、当時の日本とは比べられないくらいの経済レベルだった、それが、ここまで追いついてきたこと、そして、一部では、日本を追い抜いたことを、素直に、称賛するべきだと思う。

もし、日本の国民に、それができないならば、悲しいことに、どんどん抜かれて行くしか無い結果となる、なぜなら、現状をきちんと把握することが、将来の対応につながるからだ。