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ベルギーで「仏教の教え」が支持を得ている理由、信者は15万人、正式な宗教としても認定

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ベルギーで「仏教の教え」が支持を得ている理由、信者は15万人、正式な宗教としても認定
5/6(土) 12:02配信 東洋経済オンライン
 長い道のりを経て、仏教はベルギーで3月末に正式に宗教団体として認定されました。2006年にベルギー仏教連合(UBB)が仏教を無宗派の人生哲学(philosophie non confessionnelle)として認定するよう求めてから17年してようやくここまでたどり着きました。
 欧州連合(EU)加盟国で仏教が正式に認められるのはオーストリアに次いで2カ国目。今回の認定により、仏教徒を港や空港、刑務所や軍隊といったところに派遣できるようになるほか、教育機関で仏教のコースを教えることが可能になります。人々が精神的な指導を必要とする場所で、仏教の倫理的価値を活用し、これらの価値観を広めることができるようになるわけです。

■仏教の教えを広めることが可能に
 今回の認定が示すのは、仏教が小さな現象ではなく、ベルギーの社会の中に溶け込んでいるという事実です。実際にヨーロッパ、特にベルギーでは仏教徒が増えており、15万人のベルギー人が仏教を信仰しています(30以上の仏教施設などがあります)。さらに、50万人以上のベルギー人が仏教の教えに関心を持っているとされます。
 1980年代までは、ヨーロッパでは仏教の教えを実践している人たちは、ほぼカルトのメンバー、あるいは奇妙な世界の人たちだと思われていました。しかし、1989年にダライ・ラマノーベル平和賞を受賞すると、そのイメージは一変しました。特に仏教の一派である禅宗の教え「禅」はその後、大きな支持を得ていきます。
 「内なる沈黙を鍛え、闘争心や葛藤を沈ませることが、仏陀が人間に与えた大きな目的でした。禅の瞑想は、この沈黙の実践です」と、ブリュッセルで禅の修行などを行っている協会「ダイセン・センター・ゼン」の創設者であるディディエ・エルヴォーさん(ディディエ龍玄僧侶)は説明します。
 エルヴォーさんは1975年、フランス・パリで、僧侶の弟子丸泰仙(でしまるたいせん)さんのもとで座禅を始めました。「弟子丸泰仙の教えは、誠実で、寛大で、インパクトがあり、シンプルなものでした。その教えは瞑想に基づきながら、創造性をもって私たちの日常生活に浸透していくものでした」。
 エルヴォーさんと禅の出会いは突然でした。ある日、車のタイヤがパンクしてしまい、修理後に手を洗おうとしていた時のこと、彼は小さなお店に入り、そこで禅のセッションが行われていることを知ったのです。
 「禅とは何ですか」と彼が尋ねると、彼は中に入るように促され、その日初めて禅のセッションを行いました。それ以来、ずっと禅を続けていると言います。当時、禅は日本やアメリカでは知られていたものの、ヨーロッパでは知られていませんでした。

■ヨーロッパ人の習慣に合うようにした
 振付師のモーリス・ベジャールや歌手のダリダなど、有名人も弟子丸の禅のセッションに参加していました。エルヴォーさんはドキュメンタリー監督・プロデューサーとして活躍する傍ら、1978年、弟子丸さんより「龍玄」の名で僧侶の戒律を受けました(弟子丸さんは1982年に死去)。
 弟子丸さんは、禅の瞑想が真に普遍的なものであることを知っており、瞑想の形式主義や不必要な慣習を排除し、ヨーロッパに禅の瞑想を広めました。そして何より、彼は自分の教えと姿勢をヨーロッパ人の習慣に適応させたのです。そのためには、禅は革新的で創造的であり続ける必要がありました。
 弟子丸さんがフランスで始めた禅の普及活動に日本ファンとして知られるフランスのジャック・シラク元大統領も大いに賛同し、パリ東部のヴァンセンヌの森の公園内に塔が設置されることになりました。現在もそこには弟子丸さんの彫刻があります。
 曹洞宗の伝統に則り、僧侶であるエルヴォーさんはこの経験を生かし、2009年からダイセン・センター・ゼンでこの教えと瞑想の修行を続けています。「禅は個人的な経験ですが、1人で修行することはできません。禅は精神を強くし、自分を強くする。しかし、『無所得』以外に、禅には他に目的も目標もありません」とエルヴォーさんはいいます。
禅のプログラムは次の通りです。40分間の瞑想、7分間の経行、40分間の瞑想、そして最後に簡単な儀式を行います。実施日時は、月曜日、火曜日、木曜日の午後7時から8時半まで。
 禅のセッションの参加者は実に多彩で、40年間瞑想を続けている70歳の3児の母や、欧州委員会で働く多くの職員、30年間ヨガを続けてきた中、最近禅に出会った看護師などさまざまなバックグラウンドを持つ人がいます。
 空手をやっているセドリックさんは、自分の空手の動きを理解するために瞑想をしているといいます。彼は空手の型を機械的に行っていましたが、その後、彼は『 肚(はら)』を見出したといいます。瞑想は彼の空手を完全に変えてしまったのです。

■禅で変わったギタリスト
 エルヴォーさんは、年に4回、ベルギー北西部ブルージュカトリック修道院で1週間のセッション(料金350ユーロ)も開催。1日1時間30分の瞑想セッションが5回行われます。食事は、この瞑想セッションの料理人である「典座」が作ります。
 ギタリストだという参加者の1人は、4年前に瞑想を始めてから、自分の音楽がより深くなったことを実感しているといいます。
 禅は座禅の修行であり、2600年前に迦牟尼仏が生きた原初の経験です。禅という言葉は、黙想という意味を持ちます。禅は本来、地面に座り、黒い座布団に座って足を組み、背筋を伸ばすもの。目的も対象もなく、静寂の中で、平和な状態に身を置きます。
 「体は少しずつ、身体と精神が一体となった喜びという、本来の状態を取り戻していくのです」とエルヴォーさんは説明する。
 マインドフルネスをはじめ、禅宗の伝統に基づくさまざまな瞑想技術は、今では非常に人気があるほか、瞑想は科学的に人を癒す効果があることが証明されています。最近はスポーツ選手からビジネスピープルまで幅広い人が瞑想を実践しています。中には精神的に強くなるために行っている人もいますが、エルヴォーさんによれば、これは自分のエゴに集中しすぎており、禅の趣旨とは逆行するものだといいます。

■ヨーロッパ人の支持を集める背景
 現在の情報社会では、私たちはつねに多くのことを考えさせられる状態にあります。禅の修行を通して、私たちは、自分が何をしているのかわからないまま、つねに何かを探してさまよい続ける、という状態を断ち切ることができるのです。
 禅の瞑想で大切なのは「今この瞬間」であり、未来ではありません。「目を開いて今を生きる。これが禅の修行であり、私たちの最も具体的な日々の営みのすべてです。私たちの日常生活はとてもシンプルですが、そこに注目することが真に重要なことなのです」とエルヴォーさんは説きます。
 「瞑想の中で、私たちは穏やかな気持ちになり、自分の自由を実現し、この広大な世界に存在するすべてのものと一体化することに安らぎを覚えることができるのです」
 国家間の衝突や民族間の争い、ネットで絶え間なく繰り広げられる小競り合いや誹謗中傷――。世の中の至る所で争いが起きる中、仏教の「非暴力」のイメージは今でも強く、このことはヨーロッパにおける仏教人気を後押ししているのです。